地獄絵図の授業参観

 1週間後、ゆりあの授業参観の日がやってきた。

 鬼塚はゆりあの母・春日彩と共に小学校に向かった。学校に着くとゆりあの同級生の親達から怪しまれたが、鬼塚が名刺を出し、親達は鬼塚の正体がわかるとそれ以降そんなに気にも留めなかった、

 国語の時間、生徒達は「私の友達」をテーマに作文を発表をした。

 いよいよゆりあの番が回ってきた。

「次、春日さん」

 布川未来が呼ぶと

「はい!」

 ゆりあは元気よく返事をし、作文を読んだ。

















































 私の友達 春日ゆりあ

 私の学校の友達は、いつも私が嫌がる事をしてきます。

 4月10日、脇田明君と石塚真理子さんは教室のお掃除をせずに私ばかりに掃除をやらせて私を馬鹿にして指図してきました。私は嫌な気持ちがしました。その後、私は家のトイレでずっと泣きました。

 4月12日、重政冬子さんが、私の机に『馬鹿』や『キモい』と大きく書いていたので、『止めて』と言ったのに続けていて不愉快でした。

 4月20日、工藤隆之介君が私のお気に入りの猫のハンカチをハサミでギタギタしていました。ハンカチはお祖母ちゃんからもらった物だったので、とても嫌な気持ちでした。

 他にも脇田明君、石塚真理子さん、重政冬子さん、工藤隆之介君からたくさん虐められました。勉強で間違えたところがあるとすぐ私を馬鹿にするのは常にこの4人です。

 こんな事が続くから学校行きたくないです。

 意地悪な友達がいる学校なんか行きたくないです。

 お父さん、お母さん、校長先生、布川先生、助けてください。





 



















 














 途中ゆりあは泣いて作文を読んだが、生徒と保護者側はざわざわとし、空気が重くなった。脇田明、石塚真理子、重政冬子、工藤隆之介は泣き出した。

 すると、重政冬子の母親がヒステリックになり、

「ふざけないで!うちの子はそんな事しない!」

 今度は脇田明の母親が

「うちの明は優秀だからこんな事しない!」

 と叫んだ。

「こんなの出鱈目よ!」

 工藤隆之介の母親は怒り狂った。

「うちの冬子は、優しい子よ!」

 重政冬子の母親が泣き叫んだ。

 4人の母親は授業が終わるまでずっと泣き叫んだり激怒していた。ついには、

「鬼塚さん、今日出てきているんでしょ!出て来なさい!」

 と鬼塚を名指しし、それを聞いた鬼塚は教壇の前に立つと

「皆さん、これは事実です。彼女は、勇気を出してこうして作文に書いたんです。私はそんな彼女をお手伝いをしただけです」

 と声を張り上げた。

「ふざけないで!」

「牛鬼に私達の気持ちが分かるか!」

「どうせゆりあちゃんを騙したんでしょ!」

「出てってよ!」

 布川未来が必死で宥めたが、4人生徒の母親達はずっと鬼塚を罵っていた。他の生徒の発表が出来ず授業は終わってしまったのだ。

 結局残りの生徒の発表については別日にビデオカメラでその様子を録画撮影し、後日保護者会で見せる事となった。


 事務所に戻った鬼塚は、伊万里達に学校であった事を話すと

「うわー。大丈夫ですか?」

 と本郷。

「虐めは事実なんだからね…」

 と一華。

「鬼塚さん、大変な事になりそうですね」

 と伊万里。

 伊万里達は不安になってきた。

 翌日、事務所のチャイムが鳴り、出ると重政冬子の両親と工藤隆之介の両親が鬼の形相で

「鬼塚出せ!」

「謝れ!」

「謝れ鬼塚!」

「出てこい!牛鬼!」

 そう大声で言ったが、

「申し訳ございません。鬼塚は生憎席を外しておりまして」

 伊万里が必死で説明した。

 鬼塚は別の依頼で本郷は山田家へハウスクリーニングと買い物代行へ行っているため、事務所にいるのは一華と伊万里だけだった。

 伊万里が説得する一方、一華は脇田明の両親と石塚真理子の両親からの電話に対応していた。

 これが1週間も続き他の依頼人に迷惑がかかるぐらいだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る