鬼塚、帰還!しかし…

 桜田から鬼塚の話を聞いた伊万里は

「鬼塚さん苦労したんですね…」

「あの時は今みたいに妖怪が人間社会に溶け込むなんて難しかった時代でしたからね」

 だが、側にいた鬼塚は

「苦労したっちゃしたね。桜田先生と出会って人間みたいな暮らしができて幸せだったよ」

「清志郎、ありがとう」

 桜田は涙ぐんだ。

 その時、

「ただいま!」

 と声と共にリビングへ小型犬ぐらいの大きさの烏天狗が入ってきた。

「桜田先生!お客さん来てるって?」

 烏天狗の子供は伊万里に気付き、

「あー貴女ですか!はじめまして!蝶丸です!」

「皇伊万里と申します」

「もしかして、清志郎さんの部下の?」

「はい、えっと蝶丸君だっけ?鬼塚さんみたいに桜田さんの家に住んでるの?」

「はい!4年前、パパ上が人間のところで修行して来いって言われ、パパ上の上司の僧正坊様のコネで桜田先生のところでお世話になってます」

 蝶丸はハキハキと話した。

 僧正坊とは鞍馬山に住む大天狗だ。

 蝶丸は4年前、父親から人間社会で修行するよう言われ、僧正坊の伝手で桜田のところで世話になっているのだ。

「蝶丸、もうお父さんから帰ってこいって言われただろ?」

 鬼塚がそう聞いたが、

「けど、今妖怪が普通に外歩けるようになったじゃん。僕将来の事考えようかと思って…」

 蝶丸は自信なく話した。

「お父さんはそれ知ってるの?」

 桜田は心配そうに聞いた。

「はい、それに修行はもう終わったからその後どうするか考えろって」

「そうか、焦らずに考えなさい」

「はい…」

 すると伊万里のスマホが鳴り、電話に出ると相手は一華だった。

『皇ちゃん、鬼塚さんに会えた?』

「はい、今鬼塚さんの実家に…」

『そうなの!?それより大変なのよ!またあのモンスターペアレント達が来たの!もう私達じゃ手に負えないわ!』

「わかりました!すぐ帰ります!」

 伊万里はそう言って電話を切った。

「申し訳ございません!何でも屋が大変な事になったんで私はお暇します!」

 伊万里が話すと桜田は察して

「そうですか…。また今度いらしてくださいね」

「はい」

 伊万里が帰ろうとすると桜田は

「清志郎、どうする?帰るのか?」

 厳しく問われた鬼塚は最初考えるような素ぶりをしたが、

「行くか!後の2人も僕いなくて寂しがってるし、桜田先生ありがとう!じゃあ」

 鬼塚は伊万里と共に東京に向かった。

 その背中を見てすぐ追いかけたくなった蝶丸だった。


 鬼塚と伊万里は東京に着き、その足で何でも屋に向かうと4人の生徒の親達が本郷と一華に鬼塚を出すように怒鳴った。

 鬼塚が本郷と一華に声をかけると2人は鬼塚と伊万里の姿を見て

「鬼塚さん、皇ちゃん助けて!」

 一華は泣きそうな声を出し、

「もう限界です…」

 本郷は疲れ切っていた。

 鬼塚に気づいた4人の生徒の親達は鋸や刃物を振り回し、

「鬼塚!!」

 と血走った目で鬼塚に襲いかかった。

 鬼塚はビルの屋上まで逃げ、それを4人の生徒の親達は追いかけた。

 屋上に着くと4人の生徒の親は鬼塚を追い詰め、鬼塚は後退りをしたが、手すりまで行ってしまった。まさに絶体絶命の状態だった。

 これをチャンスと思い、親達は鋸で力いっぱい手すりを切った。切られた手すりは、大きな音をたてビルの下に落ちた。

「死ねー!鬼塚ー!」

 親達がそう叫んだが、

「清志郎さん!」

 という声で親達は振り向くと京都にいるはずの蝶丸と警察官数名がいた。

 そして、後を追うに伊万里、本郷、一華もやって来た。

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