三千世界の鵺を殺し、君と蕚で眠りたい。

　　蕚聯《がくれん》国には、世の穢れと死霊から成る物怪という存在がいた。物怪は霊力を持つ者にしか祓えないため、時代が進むにつれて権力を持つようになった。それが五大御祓屋《ごだいみはらや》である。五つの領はそれぞれの領土を浄化しながら中央の帝を守護していたが、まだ国の隅々まで管理が行き届いていなかった。
　ある山の麓にある小さな村は、まだどの領の管理下にもなかった。しかしそこに住む白露という巫の少女は、奇跡的に唯一物怪を祓う力を持っていた。生まれた時からその役目を担ってきた彼女は、いつまでも溢れ続ける穢れとそこから生まれる物怪に、己の限界を感じ初めていた。
　役目から逃れることも、村人を救うことも叶わないと儚んでいたところで、一羽の鶴が空を飛んでいるのを見て吉兆を感じる。
　その後、物怪が山に…続きを読む