森
次の日からリサーチが始まった。
僕は野球部の森とは面識がなかったので、他の野球部の知り合いに聞いていった。
「なぁ、あの森って子女友達とか彼女とかいるの?」
野球部は基本的に彼女は作ってはいけないという暗黙のルールがある。
だから、彼女はいないだろう。
野球部曰く好きな子は聞いたことないという。
「ていうか、森ってどんな奴なの?」
森という男は遠目で見ると明るい坊主頭の良い奴だけど、僕はなんとなく嘘つきに見えていた。
「でもさ、森ってさ。たまに怖い人たちと一緒にいたりしない?」
「俺も見たことあるわ。大きいバイクに乗った。人と話してた!」
ほらな、きな臭いな森くん。
野球部達に感謝の言葉を伝えて、自分の教室へ戻る。
「おー。ちゃんと働いてくれているかね!」と僕の席にサヤカが座っていた。もちろんサヤカの周りには他にも女子がいた。
「とりあえず、どけよ。また連絡するからさ。きみも授業遅れちゃうよ。戻れ戻れ!」と追い払った。
僕はまだ馬鹿女の温もりが残る椅子へ座った。
僕の机に
「しっかり働きたまえ!きみには期待している」と書いてあった。
昨日聞いたメールアドレスへ
「千円返して森に全部バラすぞ。」と送った。
1分しないうちに
サヤカから
「すまない!勘弁してくれ〜=(^.^)=」と見たことのない絵文字を入れて返信がきた。
僕はそれには返信をせず、机の文字を一生懸命消しゴムで消した。
そして次の休み時間に森の黒い関係について、相談をするためにナオキを探した。
4階の多目的トイレの前でしばらく待っていると、女が出てきて、そのあと20秒後に同じ扉をあけてナオキが満足そうな顔をしてでてきた。
「やあ!ナオキさん。出てくるのはあと30秒待った方がいいと思うよ」と声をかけた。
ナオキは一瞬驚いた表情をして
「珍しいな〜なんかよう?」とすぐ真顔に戻った。
サヤカの事は伝えずに森について調べて欲しいとお願いをした。
ナオキは
「おーけー!今夜ちょうど集まるから聞いておくわ」と軽い返事をして去っていった。
放課後、帰ろう荷物をまとめているところにサヤカがまた現れた。
「さっきはごめんね。ちょっと調子にのっちゃったみたい」と言ってきた
僕は単純に
「ねえ森のどんなところが好きなの?」と聞いてみた。
1年生の時に一番はじめに声をかけてくれたのが森で、毎日たくさん話をして気づいたら好きになっていた。という普通すぎる返答だった。
でも、いつもの印象と違って
森の話しをしている時のサヤカは真っ直ぐでちゃんとしていた。
しばらく話しをしたあと
「ね?ちゃんと謝ってちゃんと話したから、もう少しだけ頑張ってくれないかな?」とうつむく僕を下から覗いてきた。
財布にはしっかりと千円が残っていたが、
「本当はさ、千円使っちゃったんだよね。返せないしね、まぁしかたがないから最後までやるよ」と答えてしまった。
極めて僕らしくない。
サヤカは笑顔で
「よかったーありがとう!!明日からもお願いしまーす!」とお辞儀した。
「じゃー私は帰るけど一緒にかえる?」と不意に聞かれたので、
「俺は一人で帰るよ」と返した。
「りょーかい!じゃあね〜セイタ気をつけてね」
「はいよ。そっちも気をつけてな」と返したあと気がついた。
高校生になってこんなにしっかりと呼び捨てにされたの初めてだ。
違和感がなさすぎた。不気味な女だ…
暗くなりかけている帰り道を歩いているとメールがサヤカから届く。
「今夜星が綺麗らしいよ!よかったね!」
だからなんだよ。なにがよかったんだよ。
と心の中でツッコミながら無視をした。
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