モテる男

「早く教室に入れ!」と教師は朝から怒鳴る。

僕の通っている学校は決して治安がいい所ではなかった。

それは男子も女子もどちらもバカばかり


答案用紙に名前が書ければ

入れると言われる程の『ステキな学校』だった。


2年前に建て直しされた綺麗な校舎に今はそのまま吐き出されたガムのゴミや

殴ったか蹴ったかわからないような穴

外から見るのと内側にいるのでは、印象が全く違う。



僕もナオキも毎日学校には遅刻をせずに登校していた。

どんなに遅くまで遊んでいたとしてもだ。

そんな当たり前な事を偉そうに言っても許される学校という事だ。


そして僕はこの学校に通っている人間を片っ端から見下していた。


教室に入って、まだナオキが来ていない事を確認する。

僕の背後から甘い声がした。

「ねぇ〜セイタくん。ナオキくんってもう来てるぅ?」

「あー。さっき、3階のトイレにいたよ。」(そもそもきみは誰なんだ。)と思いながら適当に返事をした。

「そうなんだ、ありがとう!」と、名も知らない女は誰もいない3階のトイレに向かって走っていった。

そのあとナオキが現れた。

すぐ僕は報告をした。

「ナオキの事を探してるブサイクな子が来たぞ。とりあえず3階のトイレにいるって伝えたよ」


「えー。誰だそれ。ブスに知り合いはいねーわ」とナオキは鼻で笑った。


僕は一応ナオキの背中に包丁が刺さっていないか確認をしてから聞いた

「おばさんと仲直りしてきた?笑」


「するわけねぇーじゃん!そんなことよりさぁ。セイタちゃん。お願い聞いてもらえないかなぁ?」


ナオキが僕をちゃんづけしてお願いをする時はだいたい決まってる

女関係だ。


ナオキは女にモテる

僕も声をかけられないわけではないが、ナオキは妙にモテる。

サッカーをやっていて運動神経は何をやらせても上手くこなす。切長で鋭い目、攻撃的な口調、発言力、どれをとっても女からすれば魅力的なのだろう。


なので、女関係のトラブルは尽きない。


そして

そんなモテ男は僕になにをお願いするのか、

それは後始末だ。


ナオキは付き合いをしては

二、三回性交を済ませると興味がなくなる。

しかし、自分から別れ話をすることがうまくできないのだ。

そして無理やり別れようとするから

ヤリモクというレッテルが貼られそうになる。


正直そのレッテルは貼られておいた方がいいのではないかと思うが、ナオキはそれを酷く嫌がる。


そこで僕に切り離すお手伝いをさせるのだ。


「セイタちゃん。悪いんだけどさぁ…今回もいつもみたいにサポートお願いしてもいいかなぁ?」と、小声で恐縮しているフリをしながら近づいてくる


「きみね、絶対いつか本当に刺されるよ」



「いや、刺されないために凄腕セイタちゃんにお願いしているのよ」


今回の件は

今の彼女とは別に他の女の子からも声がかかりそちらに行きたいという、よくある身勝手な理由で別れたい。がうまく話ができない。

というものだった。


それをどう別れ、ナオキが悪いようにならないかを考えて処理をする。



それが僕の仕事なのだ。






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