負傷勝利
朝からいろんな所が痛い。
脇腹も首も背中も擦りむいた頬も痛い。
リンチにあったわけだから精神的にもボロボロだ。
それでも学校を休むのはなんか違うと思った。
それこそ森の思い通りになる気がしたからだ。
今日はジロジロと見られるだろう。
惨めにボコボコにされた奴だと遠くから指をさされるだろう。
今日は静かにしていよう。おとなしくできる限り目立たないように…って
「おい…きみたち、なぜ俺の席の周りではしゃいでいるのかな?」
「落ち込んでて寂しいかなぁと思ってさ。しかし派手にやられたねぇ笑」
ナオキがヘラヘラしている。
ナオキのとりまきも僕の席の近くでUNOを楽しんでいる。
「はぁ…で?なんであなたたちもいるのですか?」
「ほら、原因なのは私だしね。なんか知らんぷりってできないよね」と明らかに傷ついた僕のことを笑うのを我慢しているサヤカとその友達までそこにいた。
「なるほどなるほど、ありがたいよ。本当。じゃあさ、頼むから少し静かにしてもらえるかな?」
そう言いながら僕は感謝していた。
彼らに笑われていたほうがそれくらいの軽い事で済むからだ。
森がダサい奴らを連れて教室の前を通って行く時、僕の様子を見ていた。
すぐに目を逸らして居なくなっていったのは、
ナオキやその周りの奴らが睨んで威嚇をしていたからだろう。
仕返しをすることを嫌う僕の気持ちを汲んでくれているのを感じた。
それに気づかないフリをして僕はあくびをした。
「悪いな森、僕の勝ちだ」
心の中でそう呟いた。
みんながはしゃぐ中、
サヤカが隣に座って話しかけてきた。
「セイタ、今回は本当にありがとう。あとごめんね。セイタのおかげでキッパリと諦めもついたし、もしかしたら超危ない目にあってたかもしれなかったよね」
「あぁ、本当感謝しまくってほしいよ。一回かぎりだよこれは」
「あはは。ありがとう。あと意外だったんだけどさ。あんなふうなこと普段から言うの?」
「あんなこと?」
「ほら、『スマイルくれよ〜』みたいなやつ」
「おい。それ二度と言うな誰にも言うな。今すぐ忘れろ。」
謎の慰めをしてしまったことを後悔した。
最悪な汚点だ。
でも、ボコボコにされた次の日にしては気分の悪くない一日だった。
そして12月。もう少しで一年が終わってしまう。
タバコ買ってさっさと今日は帰るとしよう
もう一度言うぞ
「悪いな僕の勝ちだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます