夜になり僕はコンビニに出かけた。前金の500円でタバコと飲み物を買った。

帰り道タバコを吸いながら、ナオキの彼女のことを考える。

ナオキは身近な女を僕に必ず紹介する。

なにかが起きた時のために。

今回の子も知っているもちろん連絡先もだ。

ナオキの事がとても好きで、人生かけて尽くしているのを強く感じた。


そんな子が急に別れを告げられて、逃げられる。ナオキのことが今の今まで好きでいたのに捨てられる。

その心境を想像する。

この作業がとても大事なのだ。


冬の夜空には星が散らばっていたが一つも綺麗ではなかった。

タバコを吸い終わるころ自宅に着いた。


あとはナオキの合図を待つ。

しばらくしてケータイが鳴った。

もちろんナオキからだ。

「別れたよ!よろしく!」

なんとも身軽なメールにため息を一度吐き出して、僕の仕事が始まった。


まず、20分後に

悲しみに暮れている女にメールをする。

「こんな時間にごめん。今なにしてるかな?」

返事はこない。そしたら次に

「忙しい時にごめん。今日ナオキと話してて気になったことがあったからメールしちゃったよ。ごめんね」と、追撃


女から簡単に返信が来る。

「ううん。わたしは大丈夫だよ…ナオキとどんな話したの?」と、


僕はメールではなく

「電話しても大丈夫?」とだけ返す。


女は

「うん。」と返信をする。


5分程時間をあけて

電話をする。


「もしもし?あ、ごめん。無理やりになってない?大丈夫かな?」と、僕は丁寧に話し始める。

「大丈夫だよ、どうしたの?」と女が聞いてくる


僕は

「いや、今日さナオキが○○ちゃんの話しの時にいつもと雰囲気が違った気がしたからなにかあったのかな?っておもって。なんかあった?」

と、何も知らないフリをわざとらしくする。


女はまんまと

「私もよくわかんないけど、急に別れたいってメールがきてそのあと返事がないんだよ」と涙声で話し始める。


「え!?そうなの?あいつ何も言ってなかったよ!喧嘩とかじゃなくて?」と更にわざとらしく動揺をする。



ある程度話したら僕がおこなうことは簡単だ。

その女の傷に飛び込んで僕に惚れさせる。

それだけだ。

きっとナオキはもう次の女に連絡をとり始めてる。


ナオキは相当なクズだが、僕はもっと罪深い。


その晩は女が寝てしまうまでとにかく同調する。

こちらは絶対に寝落ちしてはならない。

夜はまだ終わらないようだ。

タバコを吸いにベランダに出た。

やはり

今夜の星空は美しくなかった。

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