苺味
次の日、
サヤカはこちらの注文通いちご味のポッキーを買ってきた。
そしてしばらく食べていたら
「セイタはいちご味が好きなのかい?」
と、少しからかって僕に聞いてきた。
僕は
「だめなの?」と、ぶっきらぼうに返事をする。
サヤカは
「ねぇ。なんでいつもそんな感じなの?もっと楽にしてなよ〜。みんなセイタに話しかけたいけど怖くて誰も近寄れないんだってよ?」
嘘だ。そんなこと誰も思っていない。
「俺はこれが普通だよ。余計なお世話だね。」とサラッと伝えた。
「ふ〜ん」とつまらなそうにサヤカは口を尖らせながらポッキーを咥えた。
こいつ…本当に鬱陶しいな……
休み時間が終わりサヤカは去っていった。
僕は別に誰かと仲良く過ごしたい訳じゃない。
でも、今学校に来ることが少し楽しくなっていることに気づかないフリをしていた。
森事件の傷が癒えてきて、ナオキからの依頼もなくなったことで、僕は今『自分の時間』を見直す事ができていた。
そんな時、
ナオキから「今夜あいてる?」とメールが入った。
やはりあの彼女でもダメだったか
と考えて
「空いてるよ」と伝えると、
「じゃあとで行くわ」とだけ返信がきた。
長く一緒にいるとわかるが、今夜のナオキの用事は多分僕が想像していることとは違う。
とりあえず帰る支度をしていると、サヤカがやってきた。
サヤカは他人行儀に片手を軽く挙げゆっくり近づいてきて、
「セイタ、今夜あいてる?」と聞いてきた。
なんでこいつらいつもタイミングが似てるんだよ
とイラつきながら
「なんで?」
と、聞き返した。
「今夜もバイトでさ。昨日帰りメールしたりしてたから、帰り家まで送ってくれたりしないかなぁー?なんて、思って聞いてみた!」と言われた。
「あー今日ちょっと用事があるんだよ。」
サヤカは
「そうだよね。ごめん…また今度お願いしまーす」と寂しそうな顔をして教室を出ていこうとした。
僕は
「バイトが終わるころにこっちの用事が終わってたら、行ってあげるよ」
少し上目線で急いで声をかけた。
サヤカは
「おー。ありがとうございます。できるだけ遅くまで働きます!」と会釈をしてでていった。
僕がサヤカへの好感度を上げようとしているようで気分が悪い。
帰ろう。
自宅に戻りナオキを待つ。
しばらくすると、例の爆音が遠くから近づいてきて家の近くで止まった。
階段を上がってくる音が明らかに不機嫌だった。
部屋に入ってきて僕に
「ちょっとこの後一緒に来てほしいんだけど、いいよな?」といきなり言ってきた。
「おい、理由を教えなさいよ。理由を。どうした?」
「バカタレが俺の彼女にちょっかいだしてんだよ。そいつをこれから呼び出して、説教する。だから来てほしい。」
「なぜ、俺が行くんだよ。そこに。」
「なんかあった時のために、セイタが必要なんだよ。」
「なんかってなんだよ」
「なんかだよ」
「ほっとけばいいだろ?そんなやつ。」
「嫌だね。ほっとかない。二度と近づけないようにする。セイタ、頼むよ。」
「わかったよ。行こう。」
と、僕はすんなり納得してしまった。
19時に陸軍墓地公園というなかなか珍しい公園に呼び出したらしい。
もうすでにその時間だったので、急いで原付で向かった。
相手はすでに公園で待っていた。
後ろに2人連れていた。
いきなり呼び出されてるんだから当たり前だ。
相手は不貞腐れた表情でこちらを睨んでいた。
切長の鋭い目つきのどう見ても腹が立つ顔をしていた。
後ろの二人は確実に連れてこられました感が出ていた。
僕は後ろにあったベンチに座って、タバコを吸いながら様子をみていた。
(サヤカの方は今一番忙しい時間帯なのかな?)
と、僕の脳が奇妙なことを考え始めた時に事件が起こった。
話しもせずにナオキが突き飛ばした。
相手の男は吹っ飛び倒れた。
不意に起きたことで本人はもちろん
その場にいた全員が動かなかった。
さらにナオキは追撃を仕掛けようとした。
相手側の二人がナオキに飛びかかり止めようとした。
そのあいだに標的の男は逃げようとしていたので、僕はその男に向かって吸っていたタバコを投げつけた。
男の服に当たったタバコは火花を散らせて落ちた。
僕はそこで一度止まった男の胸ぐらを掴み近くにあった塀に押し付けた。
こういう時になんて言ったらわからず、
「きみ、彼の彼女にちょっかいだしたんだって?呼び出されたのはそれだよ。素直に謝りな。」と諭した。
男は「うるせぇんだよ!」と叫んだあと僕を振り払い走り出した。
二人の取り巻きを弾き飛ばしたナオキが走って追いかける。
その後ろをまた二人が追いかける。
僕はその夜の鬼ごっこを見ながらゆっくり公園の出口の前に移動した。
標的が近くにきたので僕も走り出し
男を捕まえた。
これ以上逃げられたくないので、僕は男のズボンを脱がした。
これで逃げれない。
残りの二人も僕が今回の件について説明をした。
二人は納得したのか、諦めたのか、そこから動かなかった。
上半身は真冬の格好で、下半身はパンツの切長の目つきの悪い男は息切れと嗚咽の中
ナオキに説教されていた。
20分程で説教は終わり。
3人は帰っていった。
ナオキと僕はタバコを吸いながら話しを少しして解散した。
時間は21時半、一度帰宅してバイクを置いてサヤカのお迎えに出た。
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