この物語は、奈良時代の遊行女の切ない純愛を描いています。
主人公の莫津左売(なづさめ)は、厳しい社会で生きる遊行女として客を取らなければ夕餉も食べれない状況の中、名家の男性、三虎(みとら)と出会います。
遊行女であるため、ただ待つだけの身。
そんな中でも、2人の絆は深まり、お互いになくてはならない存在になっていきます。
儚げだった莫津左売も三虎との愛で強く美しく華やかに成長していきます。
しかし、やがては切ない別れが……。
その別れのシーンが見どころです。
「あらたまの恋 ぬばたまの夢」のサイドストーリーとして、本篇を読んだ方にもおすすめです。
奈良時代の風俗や切ない恋愛が描かれていて涙を誘います。
私は思わず、深く感情移入してしまい泣けてきました。
喜びの陰には悲しみもある。
こんな切なくて美しい愛の形もある……是非、ご覧ください。
この作品は、「あらたまの恋 ぬばたまの夢」のサイドストーリーの短編です。
本編ではあまり詳しくは描かれなかった莫津左売《なづさめ》という一人の遊女の半生が描かれています。
舞台は本編と同じく奈良時代。十六歳の遊行女《うかれめ》、莫津左売ですが、客が取れなければその日の夕餉は食べられないという厳しい社会で生きています。
とある晩、莫津左売を選んだのは名家の若い男、三虎《みとら》。
彼は初めての夜に莫津左売を選び、そこから二人の愛がはじまります。
莫津左売は三虎を愛し、三虎も莫津左売を愛する。されども莫津左売は遊行女であり、三虎が来てくれるのを待つしか出来ません。
逢瀬を重ねる二人の愛は真実で、しかし過ぎゆく時の流れはやがて二人の関係を……。
こちらの短編だけでも完結するお話ですが、是非とも本編と合わせて読んでいただきたい作品です。
僕は正面から愛を語る事が大事だと思う。同時に語らぬ愛を隠す事も好きである。
この物語を読み終え、そんな事を考えていた。
誰かを想い、誰かを愛し、誰かを忘れ得ぬ、そんな恋が出来る事はとても稀有で幸福な事だと思うのです。
この物語に出て来る「愛」はとても奥深くて、僕を心を捉えました。
深く心に染みわたり、鮮やかな想いを残します。機微の感じるやり取りと深まりゆく想いの形は、読む者にこの物語への「愛おしさ」を、きっと募らせくれると思います。
誰かを想う事、その意味を考えて下さい。
誰かと恋をし、時と共に何を掴んで愛を知るのか考えて下さい。
一人では決して学びえない「想い」へと辿り着く旅路がここにあります。
お勧め致します。
火照る身に 宿りし想い 清らかに 絶佳忘却 玲瓏たるる 白玉を
皆様もお楽しみ下さいませ( ;∀;)
莫津左売と三虎は、遊行女と上毛野君大川さまの従者という身分ある男として出会います。もうその段階で、ふたりの関係はほぼ決まっています。立場ある男と、彼が一人前となった証拠としてその存在を求められるなじみの女。
もちろん、莫津左売にもそれはわかっています。彼女にとって、目をかけてくれる男ができるというのは、第一に生きていくための手段です。男がつかねば食っていけない、自分の意思で遊浮島を出ていけない女たちにとって、それは死に直結する問題でした。
でも、そんなあやふやではかないつながりの中でも、三虎は莫津左売を愛し、彼女に自信を付けさせ、美しく開花させます。最終的に三虎は別の運命の女のもとへ戻っていきますが、三虎への愛により女としての魅力を身につけた彼女には、また別の強く深い愛が待っています。
愛とはままならないもの。ひとつの愛が終わっても、そのそばで別の愛が始まることもある。複数の愛が入り混じることだってある、最初から終わりが見えている愛もある。いろんな形があるのだと思わされます。
こちらの短編は『あらたまの恋 ぬばたまの夢』に登場する莫津左売(なづさめ)を主役にしたスピンオフ作品です。
上記の長編が未読でもお楽しみいただけますので、「いきなり長編を読むのもなあ」と迷っていらっしゃる方のおためし用にもぴったりです!
私は長編読了後に読みました。
本編『あらたまの恋 ぬばたまの夢』における莫津左売(なづさめ)は、主人公の目を通して描かれるため、まるで”完璧な花魁”のように見えます。
ですがこの短編では、花開く前の彼女が見られました。
切ない恋の物語であり、遊行女(うかれめ)として生きた女性の半生を描いた短編でもある今作、本編を読んだ方にもおすすめです!
というよりむしろ、本編を読んだ方に強くおすすめしたいです。
『あらたまの恋 ぬばたまの夢』をより深く、重層的・多面的に味わうことができますよ。
莫津左売(なづさめ)の素顔に出会えるだけにとどまらず、本編のヒーロー三虎の新たな魅力も発見できるかも知れません!
本作は、遊行女を主人公とした切ない恋物語であり、奈良時代を舞台に恋愛や人間模様を描く「あらたまの恋 ぬばたまの夢」のサイドストーリーにあたります。
本編を読んでから本作に出会った私はもちろん、すぐさま物語の世界に引き込まれました。
ここまで深く感情移入できるのは、本編の結末を見届けたからでしょう。
同時に、本編を読んでいなければ、全く別の楽しみ方があったのだろうなとも思い、未読の方々が少し羨ましくもあります。
出来ることならば、本編に出会う前に本作を読み、本編を読んでからまた本作を読みたい……!
そんな気持ちにさせてくれる、とっても素敵な作品です。
多くの方にお勧めします!