もう戻らない、いつでも戻れる、時間たち。

作者さまのいくつかの短編をまとめた作品です。ただ、こうして改めてひとつの作品として読ませていただくと、またちがった感想がうかびます。

ひとつひとつの作品は、きらきらした、あるいはしずかな涙に溢れた、やさしいものがたりたちです。それぞれだけでも、もちろん、成立する。

でも、わたしたちはこの作品の時間のながれのなかで、作者さまのそばに座って、もう戻らない、あの懐かしい日を一緒にさがして、そうして読み終わったとき、いつのまにか、自分のなかにあった「その日」に、戻っているんじゃないかって。それが許されるおはなしなんじゃないかな、って。

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