短編集です。
主に大学生の恋愛がいろいろな角度から描かれています。
胸がきゅっとするような話の数々。
比喩表現がとても素敵で、
「大陸からの寒波はエクレアにかかったチョコレートみたいに列島を覆い尽くし」
とか
「例えるなら炭火焼きみたいな男で、心の奥に烈々たる熱を秘めながら、落ち着いた大人風に展観せしめている」
とか
もう、胸にずんって突き刺さります。
短編はどれもとてもいいのですが、
第5話 「たまにはこんな」、
そして、福山さんの代表作になっている、「アイトハ」がとても好きです。
「たまにはこんな」に描かれた、寂寥感とか
大人のさみしさを知りつつも、一方では子どもらしくあるところとか
高校生とは違って、やはりもうただ好きっていうだけの恋愛ではなくなっていくところが描かれていて、そこがいいなって思いました。
「アイトハ」。
これは泣けます。
何度読んでも、やはり最後の手紙がとてもいいなと思います。
ぜひ映画化されて欲しい作品の一つです。
恋愛小説家、福山典雅さんの紡ぎ出す透明感のある恋愛話を堪能出来ます!!
大学のサークル「いみじくもひとごこち」という場所に集った男子三人と女子二人。
各々が独自の人生観、恋愛観を持ち、交流しながらささやかな青春を謳歌していくお話。
短い中にも様々な人間ドラマがあり、人のココロを時にはさらけ出し、時には隠そうとする。そんな青くも大人びた大学生たちの日常がなんとも心に響きます。
そして、それらのキャラクターが各々違う個性を持っていて、その誰もが「自分」の視点から行動している、つまり全員が主役であり、舞台装置であるだけの脇役が存在しない素敵な世界。
そう、それは私達が生きる、この現実世界。
短い物語の中に、そんなリアルでかつ素敵なサークルを描いた爽やかなお話。甘くて苦い、すっぱくて、また甘いこのお話を味わってみませんか?
作者さまのいくつかの短編をまとめた作品です。ただ、こうして改めてひとつの作品として読ませていただくと、またちがった感想がうかびます。
ひとつひとつの作品は、きらきらした、あるいはしずかな涙に溢れた、やさしいものがたりたちです。それぞれだけでも、もちろん、成立する。
でも、わたしたちはこの作品の時間のながれのなかで、作者さまのそばに座って、もう戻らない、あの懐かしい日を一緒にさがして、そうして読み終わったとき、いつのまにか、自分のなかにあった「その日」に、戻っているんじゃないかって。それが許されるおはなしなんじゃないかな、って。