これも愛、あれも愛、多分愛、そして哀。

シリアルキラーを追い詰める刑事の攻防劇から始まる物語。
本編に入ってもずっとミステリー色が濃い。
が……。
作者様曰く「これは恋愛小説である」と。

ほむ……。
確かに、犯人と刑事の執着は、倒錯した恋愛にも似て……。
確かに、主人公が転移した姫様は悲恋に打ちひしがれて……。
確かに、主人公が転移した姫様は三人の殿方に、三者三様に恋い慕われ……。
ん?
じゃあ、恋愛小説なのか?

でも……。
転移した当の本人が恋愛音痴の朴念仁 基 熱血敏腕刑事。
恋愛要素のみじんも無い。
只々、捜査の為に突っ走る。
やっぱ、恋愛小説じゃないやんか。

そして、腑に落ちないままに読み進めた最終章。
ああ、これは、確かに恋愛小説だと理解する。

例えるなら『暗渠』
匠な描写の端々に登場人物それぞれの愛。
それは、行間を流れ続ける想い。
そして、時折、地上に現れる水脈の如く姿を現し、恋愛音痴の脳筋刑事 基 敏腕刑事を時に翻弄し時に助ける。
そして……。
それぞれの想いは、最終回に究極の愛へと昇華して、愛の海へと解き放たれる。
そんな感じです。

全編通した面白さ・描写の巧みさは、もちろんの事。
ラスト、怒涛の感動が味わえる素敵な作品です。







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