圧巻のリアリティ。確実に作者は奇才。

まず、「この話をツイッターのRTで知った」という人は多いだろう。私もその一人だ。けれど、「カクヨムというサイト自体これで初めて知った」という人もいる中で、私はここをよく知っている。

そこで、カクヨムを愛し出入りしている皆さんに向けて、小説としてのこの物語の良さを紹介したいと思う。



最初に。
このお話はフィクションである。
このお話はフィクションである。
このお話はフィクションである、
と、3回は唱えて気を確かに持ってこの話を読むようにしてほしい。

というのも、あまりに全ての話にリアリティがありすぎて、ぼんやり読んでいると全ての話が実在すると勘違いしてしまいそうになるからだ。

淡々と語られるインタビュー。西暦込みの具体的な日時の情報。日本のあちこちの地名。あえて伏せられた「渦中の地域名」。

そして、あるいは誰もが見たことがあるサイト。その内容。ともすれば大方の読者が読み飛ばすだろう記号の羅列さえ作り物だなんて、いっそ作者の表現に対する狂気を感じる。

あるいはマイナーすぎる観光資源に。あるいはなんてことはない業界の常識に。作者の並々ならぬ努力と狂気が詰まっている。どういう取材や調査をしたらこれが書けるのか?恐らく見る人が見れば、あらゆる箇所に「リアリティ」を感じられるだろう。

それだけこの「物語」のリアリティは常軌を逸している。



中でも私が驚いたのは、作中「読者からの手紙2」と表題された一節。

私は元郵便局員で、仕事中何度か「キ●ガイからの手紙」というのを目にしたことがある。

それは大概白紙のハガキにびっちり文章が書かれていて、その内容は借金の取り立てであったり、個人に対する恨みつらみの羅列だったり、宗教の勧誘だったりと、まぁ気味の悪い文章であることが大半なのだが
(そして郵便局員は、見たくなくても仕事の都合上郵便物の中身が目に入ることが多々ある。ハガキ形式の手紙だと尚更で、なぜかそういうのはハガキが多かった)。

「読者からの手紙2」が、あの頃見たそれらの郵便物とよくよく似ていてゾッとした。

支離滅裂な文章、突然飛び出す自分語り。おかしいのは明らかにソイツなのに、何故かこちらを心配している様子の気遣わしげな言葉。知能が低いのかなんなのか、やたらに平仮名を多用する文体。

ああ、この作者はどこでこれを見たのか。身近に書く人がいたのか。そんなレアリティを考えると、

これは事実なのでは?

という恐ろしい思考が浮かんでこびりつき、消えなかった。
いいや、これはフィクション。フィクション。作り物……!



バラバラに散らばった、一見無関係の出来事たち。読み進めるとわかる、「とある地域」を中心とした物語。点が無数に浮かび上がり、繋がり、線になる感覚。これは実写映画化にだって耐えられる、上質なホラーだ。



追いかけてくる女。手招きする男。
日常に紛れ込み、読者を飲み込む恐怖。
あなたはこれに耐えられるか?



心臓に自信のある方はぜひぼんやり読み進め。
心臓に自信のない方は一話読み終わるたびに「これはフィクション」と唱えてほしい。


フィクションとはなんなのか?と問いたくなるほどの、圧倒的リアルを伴う恐怖体験をぜひ。

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