薬師の少女とイケオジなハンター二人の、不治の病を治す万能薬の材料を集めるための旅物語。旅先で色々な人たちに出会いながら、二人の距離も縮まっていく。
長い間森で暮らしていた世間知らずな薬師ビビ。街では人見知りを発揮してハンターの後ろに隠れているのに、薬や病気のことになるとキビキビ行動している姿がギャップがあって好きです。ハンターに寄り添って寝ているビビは可愛くて癒されます。
物語の途中で二人が離れなければならない場面がありますが、離れていてもお互いを想い合い、頑張ろうと前を向く彼女たちの関係性がとても素敵でした。
どんな風に万能薬の材料を集めていくのか。旅でのピンチをどう乗り越えていくのか。みなさんもぜひ二人旅を見守ってみてください。とっても面白かったです!
この世界、この国での薬師は、教会の支配下に置かれ、異端者と蔑まれていた。
そんな中、森で孤独に暮らしていた薬師のビビの元に、死にかけのハンターが訪れる。
ビビによって一命を救われたハンターは、教会の支配下で生きるビビの自由を求めて、万能薬の材料を探す旅に出ようともちかける。
必要な素材を追い求め、旅が進んでいくうち、ふたりの間には、絆と信頼が生まれてくる。やがて、その絆と信頼は、ある種の感情に変わりつつ……。でも、お互いに踏み込めないまま、旅の終わりが近づく頃……、ふたりの周囲はきな臭くなっていく。
目的の素材を集めることは叶うのだろうか……?
ふたりの、噛み合ってるようでズレている会話がおもしろい。ビビが、言ってしまったあとで羞恥の色に頬を染めていくのもかわいらしい。そして、ハンターからのストレートな返事なのに空回りしているのが、さらにかわいいのです。
ビビが安心して眠りにつくことができる場所……。ハンターには、しっかり護ってもらいたいものである……が。
わたしも言ってみたい、言われてみたい、この夜が、一番素敵である。
読了して考える。
本作のターゲットはどの辺りの層だろうかと。
下は、思春期に手が届きそうな少し背伸びする少女から
上は、初老のナイスミドルまでだろうか。
『歳の差甘々溺愛冒険』モノなので、中年男性にとって「これメッチャいいじゃん」と、はしゃぎまわると、社会的な地位を失いかねない危険なジャンルではありますが、幸いなことにPTAに怒られそうなレーティングは設定されておりません。
とはいえ、甘いです。下手な情交描写よりも情緒に訴えかけてきます。有罪です。
もちろん、最初から甘々ではありません。
「男として、乙女の唇をけがした責任は取らねばならん」
男の側から言えば、ただの義務感から始まった関係でした。
「運命は死にそうな顔でオマエの足元に転がってくるかもしれない。その時は覚悟を決めて行くんだよ」
少女の側から見れば、師匠の教えに従っただけかもしれません。
にも関わらず、二人の旅は必然だった。
得たものは、何もかもが不可欠なピースであり、二人の絆が深まらなければ姿を見せない欠片もあった。
二人は何一つ取りこぼすことなくそれを手に入れ、たった一つの場所に至る。
そこには、いつか終わる有限の夜ではなく、繰り返されるいくつもの夜がありました。
そこを見届けることができたことを嬉しく思います。
作者様の文章について一言。
読み易い確かな文章力はもちろんですが、なによりも機微の表現が秀逸と感じます。
さりげない一文の中にとても多くの感情を潜ませている。
単純な情景描写や直接的な心情描写ではない「読者へ届け!」とばかりに散りばめた言の葉がとても心地よいのです。
しばらくは幸せな読後感に浸ります。
そしていつか、心が甘みを求めたら、この物語を何度でも紐解こうと思います。
薬師。
教会に「異端」と誹られ、一生薬を作り孤独に生きることを強制された者。
ハンター。
魔物を狩り、植物の採取をし、それらで生計を立てる者。
本来交わることのない二者が出会い、行く道は、時に甘く時に鮮烈な、乳白色のオパールに似た輝きを放つ。
海を越え砂漠を越え、雪原も火山も越える二人の「冒険」は、やがて誰もが眉を顰める大いなる謎に迫る──。
処刑か、無罪放免か。
薬師の原罪を贖う旅の行く末を、どうかあなたも見届けて。
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……と、あらすじをかっこよさげに紹介しましたので、あとは自分の独断による推しポイントの羅列です。
とっ…………にかく、イケオジハンターさんがかっこいいです。
見て。この100億満点かっこよすぎるハンターさんを見て。
平常時の軽口、余裕、非常時の凛々しさ、剣技の美しさ、悪巧みが得意で知恵の回る頭脳、人においそれと語れない過去、儚く胸に抱いた夢、全てがぶっちぎりで心臓を破壊していきます。
イケオジが好きな人は頼むからこの人を見てくれ!名前を呼べないのが口惜しい!!こんなにかっこいい男そういない!!!!だから見てくれ!!!!
そして、そんな彼に寄り添う薬師のビビちゃん。押しも押されもせぬ正統派ヒロインで、人見知りの弱さと、仕事に一途な情熱、頑固さがこれまた格好いい!可愛いけど!かっこいいんです!!
常に飄々と先陣を切るハンター、そして彼を支えようと追いかけるビビの関係がとっても素敵でした!
展開としては、常に読者の「こうであってほしい」を叶えてくれます。超王道。だがそれがいい。安易な話とは決して思わせない作者様の細かな描写、筆致、ストーリーテラーぶりが光ります。
きっとすっと絆されて、騙されて、あーーやられた〜〜!ってなること請け合いです。
あと、細かに作り込まれた世界観、生活感も見応え抜群!ファンタジー世界であるという下地込みで、幻想生物好きも必見ですよ!!
冒険、戦争、大人の恋愛、人同士の絆、ファンタジックなギミック。
これらワードにピンと来た方はぜひ一読を!!!