タイトルが二人の関係そのまんまなんです。
- ★★★ Excellent!!!
小説を読み終えたあと、即座に冒頭を読み返すのが好きです。とくに、豊かな余韻のもたらす酩酊感からいつまでも抜け出せないお話は、プロローグの、胸の高鳴る武者震いで酔い覚ましをするために。
このお話は、年若く孤独な薬師ビビと凄腕の中年ハンターの、『万能薬』作りを目的とした、あまあま冒険物語です。万能薬にはまるでおとぎ話のような材料が必要です。沼地のヌシの大ウロコ、大鍾乳洞の奥で採れる七色の涙、氷河雪ナマズのヒゲ、それから死の山に住むドラゴンの心臓。
ビビとハンターはその材料を求めて二人で旅をします。閉鎖的な森にある小さな小屋から飛び出て、初めて外の世界を目にするビビ。世界は魅力にあふれ、同時に恐ろしくてたまらないものでもあります。初めて尽くしの緊張感に疲れ切った彼女を癒してくれるのは、ぶっきらぼうなハンターの温もり(比喩ではなく、またそれ以上のものでもなく)です。
おじさんと女の子の組み合わせ、これって、とてつもなくわくわくしてしませんか? 憎からず思っているおじさんに背後から抱きかかえられ、幼子のように安心して眠る少女って、もうあまあまの極致じゃないですか? 彼女が口にする意図しないあるいは無自覚な女性としての言葉にひとり赤面するおじさん。これぞ、おじさんと女の子のペアリングの醍醐味です。もう、にやにやが止まりません。
ふたりの関係は表面的には進展しません。ビビがハンターに女性としての好意を示しても、ハンターは決してベッドのクッション以上の存在にはなりません。おじさんにはどうしても、表向きには矜持が、本音ベースでは大いなる引け目があるのです。
山もなく谷もない、ひたすらあまあまな二人の関係は読み手に圧倒的な安心感をもたらします。物語は大いに山あり谷あり、思わず涙しそうになるクライマックスの一瞬もありますが、彼ら二人の関係が、すべてをまろやかに包み、読む者みんなを温かな気持ちにさせてくれます。お勧めの物語です。