海に沈む墓標

都会から海辺の小さな町に引っ越してきた少女・香坂（こうさか）ひより。
小学生の頃に父親を亡くして以来、母親からの虐待を受けて育った暗い過去を背負い、亡父の妹である叔母のもとに身を寄せることになったのだ。

転校先の高校では、気のいい同級生たちが積極的に交流をはかろうとするが、ひよりは心を開こうとせず、岬の崖の上に建つ古い灯台に通い詰める。
寂れた岬のはずれにポツンと建っている灯台と、互いに孤独や淋しさをいたわりあえるような感覚が、ひよりの固くこわばっていた心を束の間なぐさめてくれた。
担任の男性教師・村崎 清仁（むらさき きよひと）は、孤立したひよりを心配して干渉するが、彼女にはそれがひどく疎ましく、いっそう灯台への執着がつのり……。

少女の暗い過去が、灯台に隠されていた別の悲劇と共鳴した…続きを読む