傷痕
成年に満たない青い性に汚れた食指をうごめかす大人の多くは、決して、未成熟の果実にしか食欲をそそられない特殊で
自分より圧倒的に非力であり、
すなわち、夫を亡くしたばかりのうら若い未亡人を軽率に
もちろん、彼らのすべてが、そんな
ひよりの母親と交際した
だが、
まともで誠実な男性は、ひよりの母に愛想をつかして離れていくしかなかった。
そして、汚れた食指を持つ不実な男ばかりが、熟れた果実の傷口にへばりついて果肉をすする虫のように群がり寄っては、その隣の青い果実に気付いて欲望をふくらませた。
何度も男たちに裏切られるたび、乾ききっていない心のカサブタを
あからさまに母親が向けてくる
「今までごめんね、ひより。お母さん、今度こそ、ちゃんとする。今お付き合いしてる人と、結婚の約束をしたの。あんたのことも幸せにするから。必ず」
そう言ったときの母は、間違いなく、ツキモノが落ちたように清らかな美しい顔で泣いていたのだ。
だが、その翌日の夜。母の留守中のマンションで、くだんの"婚約者"が、ひよりを突然キッチンのフローリングに押し倒した。
男が体当たりで少女を組み伏せ、セーラー服のスソをまくりあげようとしていたところに、帰宅した母親は、調理台の上にあった包丁をつかんで、男の背中に振りかざした。
ギョッとなって飛びのいた男は、その場で
母親は、そのウソを一瞬で
「じゃあね、お父さん。また明日」
合わせていた両手をほどいて、墓石に背中を向ける。
ほんの少しだけ潮風が強さを増した霊園墓地の空には、淡い朱色を帯びたグラデーションがのぞきはじめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます