第4話
「陛下、どうかドナルドを王太子にすると約束してください」
対して王妃アントワネットは、自分の息子であるドナルド第一王子を王にと望みました。
自分の息子を王にする事だけが彼女の高いプライドを守る唯一の手段だったのです。
しかし、そんなアントワネットの願いはあっさりとリッシュに跳ね返されました。
「シュラウドを王にする。もう決まっているのだ」
リッシュもまたセレナータを手に入れようと必死でした。
彼女が懇願する言葉をまともに取り合わず、シュラウドを王にすればセレナータの心を手に入れられると夢見ていたのです。
リッシュによって突然落とされた小さな火種が徐々にシュラウドを蝕み始めるのはすぐの事でした。
シュラウドが武勇を重ねるごとにシュラウドを殺そうとする者が増えたのです。
王宮で出される食事には毒が盛られるようになり、シュラウドは次第にひとの手が加わった料理を食べられなくなりました。
シュラウドが餓死をしてしまうのではと彼が危惧している夜の事でした。
シュラウドは誰もが寝静まった頃に王宮を飛び出していく音に彼は気が付きました。
ひっそりと後をつけると庭や調理場から果物をくすねる様子を彼は見ていました。
日中何も食べれなかった反動で、貪るようにして果物を食べているシュラウドに、彼が安堵をしたのは言うまでもありません。
人目を盗んで干した肉やブドウを街で手に入れながら生活をするようになると育ち盛りの身体は見る間に痩せてしまっていました。
彼が気が付いた頃にはシュラウドの鍛え上げられた身体からはすっかりと筋肉が削げ落ちてしまっていました。
老人と言われてもわからないほどみすぼらしい少年になっていたのです。
食事ではシュラウドを殺せないと判断したのか、今度はシュラウドの命が直接狙われるようになりました。
飛んでくる矢に彼が貫かれそうになった事は数え切れないほどありました。
その度に護衛よりも素早く彼を守るのはシュラウドでした。
シュラウドは衰えた身体でありながら、彼が努力で築き上げた武力は衰えることなく、シュラウドを生かしました。
昼間だけでは埒が明かないと知ると、シュラウドは夜も静かに忍び込んだ者たちに寝首を狙われるようになりました。
少しの物音で跳ね起きては、また石木を失うように眠る生活が続きました。
シュラウドはやがて風の音でさえも眠れなくなり悪夢に魘される事が増えました。
いつしかシュラウドは長い夜を眠らずにひとり耐えた後、公務が始まるまでの僅かな時間眠るという日々を送るようになりました。
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