第6話
彼はひとり笑った。
笑わずにいられなかった。
「心のままに動いた」結果、
愛しい妻も、諦めた王座も何もかもが手に入った。
餌を蒔くのは簡単だった。
身体だけ大人の扱いやすい女で、妻に近寄る男を蹴散らし
見ているだけの男に、都合のいい真実だけをみせ
彼に罪を抱く王に、王座を明け渡させた。
全て彼の思い通りに事が進み笑いが止まらなかった。
「ティア、愛しいヘスティア」
「なぁに、私のシュラ」
彼女は何も知らない。
彼が彼女一人のために国をもひっくり返したなど。
何も知らないでいいのだ。
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出典;『古き時代の隙間』(著者 XXXXX )より抜粋ー
…XX20年XX月XX日に、国王リッシュは暗殺され、二人のメイドが命を落とした。国后テニーユは魔女として処刑される。
時期国王には第一王子であったドナルドが即位し、第二王子は辺境伯を賜った。
…XX26年XX月XX日、……の罪によりイシュバール公爵は没落、公爵と妻は死罪。妻の死体は1月屋敷の門に晒された。娘は拷問で死罪は免れたが衰弱死。翌日、大きな馬車爆破事故がおこり王家お抱えの画家と王家の騎士2名が死亡。半年後には第一王子であったアレクが王家を剥奪され流罪の地で病により死亡している。
…XX27年XX月XX日、……の川で2名の令嬢の死体が見つかる。腹には子供を宿していた後がみつかる。身元がわからないほど損傷していたことから、のちに女神の裁きと呼ばれる歴史的不審死として未だに名を残している。
…XX30年XX月XX日に、あらたに王となったシュラウドはその年にヘスティアを妃として迎える。翌年には第一王子が生まれた。シュラウドは国政を整備し、国内融和に努め、40年近くにわたる戦争を終結させた。戦後は戦争によって疲弊した国家の再建を行なった。在位中から現代に至るまで国民の間で人気の高い王の一人で良王と呼ばれる。また、愛妻家としても一番有名なエピソードが……
……XX38年XX月XX日、シュラウドの記録係が死亡。死因は不明となっているが、恐らく自死と見られている。手記には「全て見ていた私が悪い」と記されていたという。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。
機会があればこのお話の令嬢視点もしくは辺境伯視点を書きたいと思っています。
ご縁があればまた次の作品でお会い出来たら嬉しいです。
mui
一度全てを諦めた王が全てを手に入れる話 甘糖むい @miu_mui
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