貴方の前でなら、私はこんなにも光濡れられる。

 ある村の女性は、想い人の前では体から光を発する。しかし主人公は適齢期を過ぎても光らない。そこで名前にちなんで「滓の身」とあだ名された。しかし主人公は、敵対し続ける村の男の前では、光ることが出来た。
 主人公が村から疎外されるのは、村で光らないだけではなく、実母にも問題があった。実母は赤光に誰にでも濡れ光り、村中の男を弄んで村の女たちの逆鱗に触れた。そして主人公はその母親を——。
 そんな中、主人公が敵対する村の男と密かに通じていることが村にばれ、密会場所から男の姿が消えた。そして主人公も捉えられる。何とか牢獄から逃げようとしたが、助けた男は主人公を罠に嵌めようとしていた。逃げる途中で気を失った主人公は村で、山姫の怒りを鎮めるオクダリサマと呼ばれて崇拝される身分となる。愛し合った男とも再会するが、オクダリサマの侍女もこの男に想いを寄せていた。侍女は村から出て、医師や最先端の学問で、信仰に囚われてきたものを直すのだと言った。果たして侍女は敵か、味方か。

 「俺以外に濡れ光ったら殺してやる」
 これが男と主人公が交わした約束だった。
 しかし、主人公は紫黒く光濡れるようになった。

 民俗学的な伝奇小説で、重厚感ある世界観と筆力が魅力的です。

 是非、御一読下さい。

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