拝啓、F先生。謎はもう解けましたでしょうか?
- ★★★ Excellent!!!
F先生は幅広い層に読者を持つ現代ミステリー作家だ。そんなF先生のもとには、いつもちょっと変わったファンレターが届く。ファンレターには、謎が秘められてていたのだ。そしてF先生は、手紙の送り主と文通することで、安楽椅子探偵のように謎を解きほぐしていく。
各章ごとに、往復書簡の相手も謎内容も異なるが、ここでは第一章から紹介したい。この章の往復書簡の相手は、男子大学生だ。大学生はサークルの先輩などから、その大学に現れた占い師について聞かされる。なんでもその占い師は、百発百中で相手のことを見抜くらしい。F先生は悪質な宗教勧誘かもしれないからと忠告しながらも、大学生からの報告を待っていた。いよいよ大学生が占い師と対面することになるのだが、その占い師の正体は、思いもよらぬものだった。そして、その占い師の言っていたことにも腑に落ちない点があった。ところが、その占い師が残した腑に落ちない部分に、主人公は思わぬ形で対峙することになった。
さて、その腑に落ちないかった部分が示していたものとは?
長編ですが一話一話が短く、書簡体小説なので、さくさくと読み進めることができます。また、F先生がどのような小説を書いているのかという部分は明示されていないのに、読み進めているうちにF先生が書いた作品の内容が分かってしまう。そして、F先生の真摯な態度にも一見の価値ありだ。
F先生の文通相手は、上述した大学生や、小中学生、教え子を案じる女性、老人など、多岐にわたる。その相手のキャラクターはしっかりと書き分けられていている。そしてそんな彼ら、彼女らに対して、F先生は柔軟に文章のレベルを書き分けている。
これらの表現方法は、作者様の技量が光るところだ。
日常系の謎に興味のある方は、絶対に見逃せない作品だ。
是非、ご一読ください。