タイトルにある通りです。
ミステリーは好きでよく読む方なんですが、カクヨムのミステリージャンルにある作品で一番刺さりました。
他のレビューを見ると、やっぱりというか。
運営さんからも公式レビューをいただいておられる。いや、わかる。これ、面白い。
ストーリーは、推理小説作家のF先生がファンレターをいただき、それに返信をする形で進んでいきます。
このF先生。有能な安楽椅子探偵です。
読者のお手紙を読んでそこにある文字だけで事件を解決していきます。
短編連作のいいところですが、時間があるときにカクヨムを開いて読むことができ、ひっかかりのない文体はするすると頭に入ってくるのがまたいい。
私は「ルート9」と「私のシロちゃん」がよかった。
それを読んだ方々と語り合いたい。そんなことを思う物語でした。
勝手ながら続編希望です。
F先生は幅広い層に読者を持つ現代ミステリー作家だ。そんなF先生のもとには、いつもちょっと変わったファンレターが届く。ファンレターには、謎が秘められてていたのだ。そしてF先生は、手紙の送り主と文通することで、安楽椅子探偵のように謎を解きほぐしていく。
各章ごとに、往復書簡の相手も謎内容も異なるが、ここでは第一章から紹介したい。この章の往復書簡の相手は、男子大学生だ。大学生はサークルの先輩などから、その大学に現れた占い師について聞かされる。なんでもその占い師は、百発百中で相手のことを見抜くらしい。F先生は悪質な宗教勧誘かもしれないからと忠告しながらも、大学生からの報告を待っていた。いよいよ大学生が占い師と対面することになるのだが、その占い師の正体は、思いもよらぬものだった。そして、その占い師の言っていたことにも腑に落ちない点があった。ところが、その占い師が残した腑に落ちない部分に、主人公は思わぬ形で対峙することになった。
さて、その腑に落ちないかった部分が示していたものとは?
長編ですが一話一話が短く、書簡体小説なので、さくさくと読み進めることができます。また、F先生がどのような小説を書いているのかという部分は明示されていないのに、読み進めているうちにF先生が書いた作品の内容が分かってしまう。そして、F先生の真摯な態度にも一見の価値ありだ。
F先生の文通相手は、上述した大学生や、小中学生、教え子を案じる女性、老人など、多岐にわたる。その相手のキャラクターはしっかりと書き分けられていている。そしてそんな彼ら、彼女らに対して、F先生は柔軟に文章のレベルを書き分けている。
これらの表現方法は、作者様の技量が光るところだ。
日常系の謎に興味のある方は、絶対に見逃せない作品だ。
是非、ご一読ください。
筆まめなミステリー作家のF先生。どれくらい筆まめかというと、読者からの感想のお手紙にも丁寧に返事を出すぐらいだ。ミステリー作家ということもあって、小説の感想だけではなく身の回りで起きた奇妙な事件の相談が送られることもある。
本作はそんなF先生の読者との手紙のやりとりがそのまま小説になっている。
完璧な未来予知を行ういかにも怪しげな占い師から、少年探偵団に憧れる小学生のほのぼのとした活動報告、F先生が昔書いた小説に関する質問など、その内容は実にバラバラ。
そのいずれの内容に関してもF先生はこまめに返信をする。読者の疑問には丁寧に答え、時に失礼なことを書かれてもやんわりと受け止め、文面だけでもF先生の人柄がしっかりと浮かんでくるのが良い。
ミステリー作家だけあって読者から持ちこまれた事件には鮮やかな回答を見せる……と思いきや、時にはF先生の推理を大きく超えた結末となることも……。F先生と読者の手紙が紡ぐ5つの短編をお楽しみあれ。
(「奇妙な犯罪」4選/文=柿崎 憲)
へっぽこ探偵藤松君シリーズで、(たぶん本人が思っている以上に)ファンに愛されているミステリー作家のF先生。彼の手元にファンレターに乗せ、読者から届けられる謎を、手紙のやりとりだけで解決していく楽しい短編集です。
書簡体の面白さはもちろんのこと、大学のミス研の部員から少年少女探偵団を結成した小学生、三十年以上、とある疑問を胸に秘めてきた専業主婦などなど。様々な顔を持つ相談者から寄せられる謎にはひとつとして同じ類のものがなく、最後までとても面白く読めました。
私はがっつりトリックに焦点を当てた物語(ミステリー)が好きです。でも、この作品のように謎解きと人間ドラマがひとつに溶け合い、読者の心に何かしらの感情を呼び覚ましてくれる物語も同じぐらい大好きです。
どの物語もおススメですが、特に第三話は胸に響きまくりでした。私はこの感情のウェーブを、ぜひあなたにもお届けしたいのです。