女という生き物の情念と妄執と虚栄と咎と毒と快楽と恋慕の業火に、気が狂う

端から端まで凄絶な物語でした。
すごかった。あまりに激しい緩急と、渦を巻くような情念に、上手く言葉が出ないほど。

愛しい男を想うと、女の身は光り濡れる。
それ故に脈々と続く隠れ里の因習から生まれ堕ちた、人間の業の物語です。
私はこれを、女という生き物の中に連綿と引き継がれていく呪いを描いた話として読みました。
燈吾という美形で床上手で博識で時々無邪気で狡いほど危うい魅力のある男の存在を介してなお。
主人公かすみの中に息づいた、禍々しい女の呪いの話でありました。

上質で生々しい官能描写はもちろんのこと、里山の陰鬱な空気や、想像を絶する凄惨で猟奇的なシーンなど、全てにおいて五感が揺さぶられます。
先読みできない展開は、予想を遥かに超えて二転三転し、ずぶずぶと深い沼に嵌まり込むように読み耽ってしまいました。何なら呼吸も忘れていたと思います。

血脈のように身の内を流れる呪いは、如何にして断ち切れるのでしょう。
人外の力を得たかすみと燈吾が行き着く先。
最後の二人の選択に、狂おしいほどの尊さを感じました。
これを愛などと言ったら陳腐に思えるぐらい。人間が人間として生きる、その矜持と美しさがありました。

繰り返しますが、凄まじい作品です。
間違いなく、私の人生の中でも忘れられない物語になることでしょう。

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