読み始めると物語世界に一気に引き込まれて、先が気になってつい夜更かししてしまいます!
一見、静謐で美しい世界観に見えますが、真実が分かってくるとなかなか恐ろしい。
その恐ろしさは自然そのものであり、決して架空のモンスターなどではありません。
「精霊」という言葉で記されてはいるけれど、時には人に恵みを与え、時には命を奪ってゆく厳しい姿は自然のことわりそのものだと思えます。
次々に謎を提示してゆく作者様のストーリーテリングが素晴らしい。
1つ明らかになればまた1つ謎が増え、あと一話、いやもう一話と続きを読んでしまう!
面白い作品をいくつか見つけ終えて満足していたけれど、まだ知らない作品があったなんて!
カクヨム、層が厚いなあ!!
拙作にブクマしてくださったおかげで出会えて感謝です。
私は笑いどころのある作品を好む傾向にあるのですが、この小説のようにほとんどずっとシリアスでも面白いものは面白いんだということを身に染みて想起させられました。
あなたも『セラの森』を読んで睡眠不足になりましょう!!(笑)
精霊の姿を見ることができる孤独の少年、セラ。
命の森に暮らす彼は、ある日失踪したはずの父親の声に呼ばれる。
……というところから始まる壮大なファンタジーなのですが、特筆すべきは読めば読むほどに引き込まれる世界観でしょうか。
最初はたくさんの謎があり、主人公のセラとともに真実を解き明かしていく旅が始まります。
その謎が明らかになるタイミングが素晴らしく、真実を知っていく度に鳥肌が立ってしまうのです。
セラが出会う人々も個性的な人物が多く、まさしく一緒に旅をしている感覚になります。
皆さんもセラととともに真実を探す旅に出かけませんか?
重厚なファンタジーを味わうことができるおすすめの作品です。
この話は本当によくできていて、いわゆるファンタジー的な「精霊」とのなれ合い的な、そんな話ではありません。一言で言えば「リアル」です。
人は生きるために「必要」なことをして生きていきます。そして、その「必要」な事が「対人間」でなければ人はいくらでも残酷になれるのです。
この物語は、そんな人の持つ「残酷性」を如実に表していて、その現実を「主人公」が、「主人公」しかできない視点を通して観察し、成長していく物語です。
こんな「受け入れがたい現実」を直視した「主人公」、果たして何を決断し、どう行動していくのか?あなたは興味がわいてきませんか?
物語は命の森から始まります。
主人公の少年セラには、両親と弟がいると思っておりました。
けれども、セラの存在には秘密が隠されていたのです。
そのセラは、父の支度した本をよくよみ、弟のトニヤが絵本に浸っているのとはまた異なりました。
この森と本の関係は、作者様の理想でしょうか。
また、読書好きの方々が読まれても憧れる所があると思います。
そして、セラには、皆に見えないレベルの精霊でもよく見えると言う能力を持ち合わせておりました。
父が失踪すると言う形で別れてしまったのですが、真実を看破し、本当の父を言い当てるシーンにも手に汗を握ります。
大樹がキーとなって、様々にセラは克己します。
それから、セラは森に別れを告げ、北へと出立いたします。
最初に着いたのは港町ロドリアでした。
親切な宿に泊めていただき、暫く働いた後、ありがたい縁もできて自身の運命に気が付きつつ海原へと出て行きます。
船でも学ぶことは多々ありましたが、私に何より強烈な印象を与えたのは、大きく荒れ狂う海の厄介者どもでしょう。
ひとつは大きな存在感を持つ精霊、もうひとつは釣り上げたら危険ではないかと思われる伝説的な魚でした。
厄介ではなく成長と呼ぶのでしょうが、同船した者達の顔ぶれが浮かぶようで、そのひとつひとつにはらはらしたり、インチキを覚えさせられたセラに俗っぽさを感じたりいたしました。
セラの成長は、ここでもみられたのです。
一方、その頃の弟トニヤの方ですが、母に誓って兄捜しの旅にと北へ向かいました。
そこは、奇しくもロドリアだったのですが、微妙に同じ境遇になってもセラとトニヤでは異なるのです。
それは、兄の背中を求めて海を行くに当たっても言えます。
何事も上手いように転がすのがセラで、トニヤは少しドジな感じがいたします。
しかし、トニヤもここでは終わらないと海の厄介者と出会って誓ったことでしょう。
かように、壮大な人間模様のドラマティックさとファンタジックな要素が上手く化学反応を起こした本作です。
大きく成長譚と括ってしまっては勿体ない気がいたします。
構成に無理がなく、拝読するに至っても分かり易くなっております。
設定をシンプルに持って来たことで、文字通り枝葉をつけるのにご苦労なさったと思われます。
けれども、作者様のご様子では、秀作を仕上げることに熱心で、微塵も感じられない程、努力を重ねているように推察いたします。
本作も作者様の地に足のついた文体で書かれており、大変好感が持てるものです。
推敲を重ねられ、改稿で大幅に加筆されたとのことですので、より重厚感が増したと思われます。
全ての過程はラストシーンを楽しみにする為に繋がっていることでしょう。
あなたの思い描くセラの幸福は、どんなマチエールでしょうか。
私には、檸檬色の潮風が吹いて来ます。
それは、セラに深く眠る真心の色に近いのかと思われます。
是非とも、セラがあれほど大切にした本を開くように、旅をしてみませんか。
精霊の見える少年、セラ。しかしその力は決して彼を幸せにするとは限りません。
周りから奇異な目で見られることだってあります。そればかりか、その力故に色々あって、とある事件を起こし、住んでいる森にいられなくなります。
ネタバレ防止のため詳しいことは書けませんが、この事件というのが、実に考えさせられます。セラの住んでいた森の住人たちから見れば、許されざること。だけどセラの視点で見ると、その行いも納得。
なら読者としては、これをどう思うか。そんな疑問を抱かせながら、物語は次の場面に移行しますが、この時点でストーリーはまだまだ序章。
森に住めなくなったことでセラは新たに暮らす場所を求めて外の世界へと向かうのですが、精霊が見えるという彼の力は、そこでも彼の生き方に大きな影響を与えます。
精霊が見える。その力に運命を翻弄され続けるセラは、旅の果てに何を見るのか。そして、彼にとって精霊とはなんなのか。
悩める少年の、答えを求め続ける物語です。
森の中にある閉鎖的な集落に住む少年セラは、精霊を見ることができる。
しかしそれ故に人々から奇異な目で見られ、孤独を感じていました。
これはそんなセラ少年が森を出て世界を見て、自分の秘密について知っていく物語……なのですが!
この森を出る前に、セラはある大事件を起こします。最初読んだ時は、えっ、こんな展開になるのと驚きました。
そんな大事件を起こして森を出て行ったセラですが、そんな彼のことを心配したのが弟のトニアです。
このトニヤというのが実にいい子で、兄セラの起こした事件の真相、セラが何を思っていたかが知りたくて、彼を追いかけて旅に出るのです。
なんて美しい兄弟愛。
森を出た兄セラと、それを追う弟トニアの二人の視点で描かれる、家族の絆の詰まった異世界精霊ファンタジーです。
真実がいつも美しいとは限らない。何が嘘で何が本当か、混沌とした時代の中にあってより一層身に染みる事実かもしれません。
この物語の主人公セラもその一人。精霊が見える15歳の少年がどこか大人びて見えるのは、人知れず孤独を抱えて生きてきたからでしょうか。ある時セラは失踪したはずの父の声を聞き――と物語は始まっていくのですが。
どこか悲しい余韻のする旅の始まりと、続いていく物語。流れるような映像と変化していく世界の中で、確かな息吹を感じ、空虚な心が満たされる心地です。
光と闇の入り混じるリアルな世界は綺麗なばかりではありませんけれども、それでもこの物語がどこか心に優しく響くのは、作者さまの人柄なのだろうと思います。
否定するでもなく正当化するでもなく、ただそこにある命を信じて慈しむように見守る。中々真似できることではないと思うのですが、そんな広くて優しい眼差しを感じました。
柔らかく透明感のある雰囲気に包まれて、セラたちと一緒に旅をするうち、いつしか抱えていた重荷を忘れて自分の心まで透き通っていくようで。
死んだことこそありませんが、もしかしたら鎮魂とはこういうことだろうかなんて思うこともありました。この物語に触れている時間は私にとって喜びそのものでありました。
残りの旅も大切に、一緒に見守りたいと思います✴️
精霊が見え、精霊の声を聞ける少年・セラを主人公とする、壮大な物語です。
森で家族と共につましく暮らしていたセラは、ある本がきっかけで自分の父親に関する真実を知ります。
それは、森の精霊にまつわる、人々が生きていくためにたどったあまりに恐ろしい歴史。
精霊を通して真実が見えるセラだからこそ、他人には理解されない思いに苦悩します。その果てに、セラが決断したこととは――
生きようともがく人間と、時に寄り添い、時に恐ろしい呪いを下す精霊。
共に生きる存在でありながら、人と相容れることはない。その不可思議な不気味さ・恐ろしさが物語をダークな色彩で包み込みます。
その中で懸命に生きる人々と、セラが築いてゆく絆。
森を出たセラが、海を越えて出逢う様々な書物、様々な人生。
人々の広い世界と、終わりのない精霊たちの世界。
それらが混ざり合って、果てのない壮大な物語を作り上げています。
この物語に飛び込めば、読者の想像力もとどまることがないでしょう。
あまりに広く、どこまでも深いセラの世界を、どうか心行くまでじっくりと味わってみてください。
精霊が見える主人公は、敬愛する父を呑み込んだ樹を焼き払い、大事な家族を置いて旅に出た。しかしその体には、精霊の呪いと思われる文様が浮き出ていた。ところが危険な船旅の最中、凶暴な精霊から船を守ってくれたのは、文様だった。
大陸に渡った主人公は偏屈な精霊学者の弟子となる。しかしこの国は、身分によって住む地区が違うという特殊な造りをしていた。そしてある日、身分の最下層の人々が通う地区で事件が起こる。師の協力を得てその事件に関わったとみられる邪悪な精霊に遭うが、そこで主人公は不吉な予言を得る。
主人公はさらに大陸を旅し、精霊を王妃に据える国にやってきた。ここで主人公の体の文様は呪いではないことが分かる。その正体は——。主人公はこの国で王女の家庭教師をしながら過ごしていたが、自分を呼ぶ声を聴き、極北の民に会うために再び旅に出る。そんな中、主人公は義弟と再会。二人で故郷の村に帰ることを約束する。しかし主人公に待ち受けていたのは——。
決断を迫られる主人公が選ぶ未来とは?
主人公は全てを捨てて旅立ちます。もう、自分の帰る場所はないと思っていたところに、義弟がやって来て、また家族として暮らそうと懇願されるのです。壮大な世界観で描かれながらも、家族の物語であり、大事な人を大切に思い、行動する勇気の物語でもあります。
是非、是非、御一読下さい!
読了後のレビューです。
物語の始まりはとある森。
主人公は精霊と縁ある少年。
セラという美しい名前、それは物語が秘める儚さや尊厳に満ちた世界へと導く魔法のような響きです。
物語で描かれる温かな家族の繋がりや、彼らが秘める悲しみ……それらが力強く、時には繊細な文章で描かれています。
そして何よりも驚かされるのは、情景や空気、風や海の音が聞こえるような場面の描写力です。
多彩な登場人物達の個性や想いもまた、物語を色々と鮮やかに染めています。
主人公セラが何を思い、何を見ていくのか……命の重みや、【生きていること】その意味に触れることが出来る物語です。
骨太のファンタジー作品です。
精霊の存在は超常現象に近く、それでいて人々の生活にも密接しています。しかし普通の人には視認することができないという、一方通行の関係でした。
そんな世界において、なぜか主人公だけは精霊が見えます。
だからこそ彼は生まれ故郷の禁忌を破ってエルダーの木を焼くことになります。
この時点で、精霊は大いなる存在であっても常に正しいわけではない、というテーマが確立します。
さらにいえば、そんな精霊を利用して実りを享受してきた人間たちも必ずしも無実ではない、という表裏一体のテーマにもつながります。
主人公が冒険をするのは、この表裏一体のテーマに決着をつけるためです。
ネタバレになるので詳しく語れませんが、主人公の出生は物語のテーマに直結するものであり、人間と精霊の在り方をどうするのか天秤にかけるものです。
そんな壮大な背景を背負った主人公が、自分の秘密を知らないまま、生まれ故郷を飛び出して、外の世界に触れていきます。
世界中にある精霊と人間のつながりから、自分が何者なのかわかったとき、主人公は大いなる選択を求められます。
精霊と大自然と人間、これら共犯関係にある繋がりを維持するのか、それともたとえ大破壊が発生しても新しい秩序を求めるのか。
さらにいえば、もし共犯関係を維持することにしたら、自分自身が犠牲になることを受け入れないといけません。
主人公は血のつながらない家族である弟を通して、この究極の選択肢に悩むことになります。
はたして主人公は、どちらの世界を望むのか?
それを見届けるのは、このレビューを読んだあなたです。