精霊が見え、精霊の声を聞ける少年・セラを主人公とする、壮大な物語です。
森で家族と共につましく暮らしていたセラは、ある本がきっかけで自分の父親に関する真実を知ります。
それは、森の精霊にまつわる、人々が生きていくためにたどったあまりに恐ろしい歴史。
精霊を通して真実が見えるセラだからこそ、他人には理解されない思いに苦悩します。その果てに、セラが決断したこととは――
生きようともがく人間と、時に寄り添い、時に恐ろしい呪いを下す精霊。
共に生きる存在でありながら、人と相容れることはない。その不可思議な不気味さ・恐ろしさが物語をダークな色彩で包み込みます。
その中で懸命に生きる人々と、セラが築いてゆく絆。
森を出たセラが、海を越えて出逢う様々な書物、様々な人生。
人々の広い世界と、終わりのない精霊たちの世界。
それらが混ざり合って、果てのない壮大な物語を作り上げています。
この物語に飛び込めば、読者の想像力もとどまることがないでしょう。
あまりに広く、どこまでも深いセラの世界を、どうか心行くまでじっくりと味わってみてください。
この話は本当によくできていて、いわゆるファンタジー的な「精霊」とのなれ合い的な、そんな話ではありません。一言で言えば「リアル」です。
人は生きるために「必要」なことをして生きていきます。そして、その「必要」な事が「対人間」でなければ人はいくらでも残酷になれるのです。
この物語は、そんな人の持つ「残酷性」を如実に表していて、その現実を「主人公」が、「主人公」しかできない視点を通して観察し、成長していく物語です。
こんな「受け入れがたい現実」を直視した「主人公」、果たして何を決断し、どう行動していくのか?あなたは興味がわいてきませんか?
読み始めると物語世界に一気に引き込まれて、先が気になってつい夜更かししてしまいます!
一見、静謐で美しい世界観に見えますが、真実が分かってくるとなかなか恐ろしい。
その恐ろしさは自然そのものであり、決して架空のモンスターなどではありません。
「精霊」という言葉で記されてはいるけれど、時には人に恵みを与え、時には命を奪ってゆく厳しい姿は自然のことわりそのものだと思えます。
次々に謎を提示してゆく作者様のストーリーテリングが素晴らしい。
1つ明らかになればまた1つ謎が増え、あと一話、いやもう一話と続きを読んでしまう!
面白い作品をいくつか見つけ終えて満足していたけれど、まだ知らない作品があったなんて!
カクヨム、層が厚いなあ!!
拙作にブクマしてくださったおかげで出会えて感謝です。
私は笑いどころのある作品を好む傾向にあるのですが、この小説のようにほとんどずっとシリアスでも面白いものは面白いんだということを身に染みて想起させられました。
あなたも『セラの森』を読んで睡眠不足になりましょう!!(笑)
精霊の姿を見ることができる孤独の少年、セラ。
命の森に暮らす彼は、ある日失踪したはずの父親の声に呼ばれる。
……というところから始まる壮大なファンタジーなのですが、特筆すべきは読めば読むほどに引き込まれる世界観でしょうか。
最初はたくさんの謎があり、主人公のセラとともに真実を解き明かしていく旅が始まります。
その謎が明らかになるタイミングが素晴らしく、真実を知っていく度に鳥肌が立ってしまうのです。
セラが出会う人々も個性的な人物が多く、まさしく一緒に旅をしている感覚になります。
皆さんもセラととともに真実を探す旅に出かけませんか?
重厚なファンタジーを味わうことができるおすすめの作品です。
真実がいつも美しいとは限らない。何が嘘で何が本当か、混沌とした時代の中にあってより一層身に染みる事実かもしれません。
この物語の主人公セラもその一人。精霊が見える15歳の少年がどこか大人びて見えるのは、人知れず孤独を抱えて生きてきたからでしょうか。ある時セラは失踪したはずの父の声を聞き――と物語は始まっていくのですが。
どこか悲しい余韻のする旅の始まりと、続いていく物語。流れるような映像と変化していく世界の中で、確かな息吹を感じ、空虚な心が満たされる心地です。
光と闇の入り混じるリアルな世界は綺麗なばかりではありませんけれども、それでもこの物語がどこか心に優しく響くのは、作者さまの人柄なのだろうと思います。
否定するでもなく正当化するでもなく、ただそこにある命を信じて慈しむように見守る。中々真似できることではないと思うのですが、そんな広くて優しい眼差しを感じました。
柔らかく透明感のある雰囲気に包まれて、セラたちと一緒に旅をするうち、いつしか抱えていた重荷を忘れて自分の心まで透き通っていくようで。
死んだことこそありませんが、もしかしたら鎮魂とはこういうことだろうかなんて思うこともありました。この物語に触れている時間は私にとって喜びそのものでありました。
残りの旅も大切に、一緒に見守りたいと思います✴️
物語は命の森から始まります。
主人公の少年セラには、両親と弟がいると思っておりました。
けれども、セラの存在には秘密が隠されていたのです。
そのセラは、父の支度した本をよくよみ、弟のトニヤが絵本に浸っているのとはまた異なりました。
この森と本の関係は、作者様の理想でしょうか。
また、読書好きの方々が読まれても憧れる所があると思います。
そして、セラには、皆に見えないレベルの精霊でもよく見えると言う能力を持ち合わせておりました。
父が失踪すると言う形で別れてしまったのですが、真実を看破し、本当の父を言い当てるシーンにも手に汗を握ります。
大樹がキーとなって、様々にセラは克己します。
それから、セラは森に別れを告げ、北へと出立いたします。
最初に着いたのは港町ロドリアでした。
親切な宿に泊めていただき、暫く働いた後、ありがたい縁もできて自身の運命に気が付きつつ海原へと出て行きます。
船でも学ぶことは多々ありましたが、私に何より強烈な印象を与えたのは、大きく荒れ狂う海の厄介者どもでしょう。
ひとつは大きな存在感を持つ精霊、もうひとつは釣り上げたら危険ではないかと思われる伝説的な魚でした。
厄介ではなく成長と呼ぶのでしょうが、同船した者達の顔ぶれが浮かぶようで、そのひとつひとつにはらはらしたり、インチキを覚えさせられたセラに俗っぽさを感じたりいたしました。
セラの成長は、ここでもみられたのです。
一方、その頃の弟トニヤの方ですが、母に誓って兄捜しの旅にと北へ向かいました。
そこは、奇しくもロドリアだったのですが、微妙に同じ境遇になってもセラとトニヤでは異なるのです。
それは、兄の背中を求めて海を行くに当たっても言えます。
何事も上手いように転がすのがセラで、トニヤは少しドジな感じがいたします。
しかし、トニヤもここでは終わらないと海の厄介者と出会って誓ったことでしょう。
かように、壮大な人間模様のドラマティックさとファンタジックな要素が上手く化学反応を起こした本作です。
大きく成長譚と括ってしまっては勿体ない気がいたします。
構成に無理がなく、拝読するに至っても分かり易くなっております。
設定をシンプルに持って来たことで、文字通り枝葉をつけるのにご苦労なさったと思われます。
けれども、作者様のご様子では、秀作を仕上げることに熱心で、微塵も感じられない程、努力を重ねているように推察いたします。
本作も作者様の地に足のついた文体で書かれており、大変好感が持てるものです。
推敲を重ねられ、改稿で大幅に加筆されたとのことですので、より重厚感が増したと思われます。
全ての過程はラストシーンを楽しみにする為に繋がっていることでしょう。
あなたの思い描くセラの幸福は、どんなマチエールでしょうか。
私には、檸檬色の潮風が吹いて来ます。
それは、セラに深く眠る真心の色に近いのかと思われます。
是非とも、セラがあれほど大切にした本を開くように、旅をしてみませんか。
この物語を読むとき、いつも「絵本を捲るようだ」と思う。それほどまでに鮮明に、主人公セラの住む世界の映像が目に浮ぶ。
精霊の姿を見ることが出来るセラはいつも孤独で、家族にも本当の気持ちを話すことが出来ない。そんなセラはある日突然いなくなった父の姿を求め、精霊に導かれ大樹の元を訪れる。
この冒頭の物語だけで完結としていいほどのスケールに圧倒される。だが、物語はここからだ。
セラは壮大な旅にでて、幼い弟トニヤが兄を追う。
旅先で出会うユニークな人々、そのふれあいの中でセラとトニヤは成長していく。この物語には、家族愛や兄弟愛、そして少年の成長など様々な要素を含んでいる。
セラは求めるものに出会えるのか。彼の旅の終点はどこにあるのか。
端正な文章で綴られた壮大なファンタジー。絵本を捲るような美しさと、映画を見るようなスケールの大きさ。
この物語を読まないのは、勿体ない。是非多くの方に読んで欲しい!
物語の主人公セラは、精霊の姿が見える特別な少年。
セラは訳あって森の精霊を殺し、家族と離れて、自らのルーツを探る旅に出ます。
深く悩み、傷つきながらも旅を続けるセラは、幾つもの不思議な体験をし、成長していきます。
知的でどこか陰のあるセラとは異なり、セラの弟トニヤは、純粋で素直な優しい少年。
トニヤは森を離れてしまったセラを探して、旅をします。
この物語は美しく残酷な世界観でありながら、心に染み入る温かさに満ちています。
それはセラの出会った人たちやトニヤが、愛に満ちているから。
旅をする中で出会う風景や、人々の息遣いが丁寧に繊細に描写されていて、世界観にすうっと引き込まれていきます。
神秘に満ちた、美しく切ない珠玉のストーリーです。
一話一話の読了後、心に染み入るような余韻がとにかく素晴らしい作品です。
ぜひご一読を♪
命の森に暮らす15歳の本好きの少年セラは、精霊が見える。そのため、人々に蔑まれて孤独に過ごすことが多かった。
ある日、泉の畔で数年前に失踪したはずの父の声に呼ばれる。
声に誘われて辿り着いたのは、森の大樹だった。
子供が立ち入ることを許されていないその場所で、セラは森の大人たちがひた隠しにしてきた呪いの真実を知ることとなる――。
"少年は精霊を殺した。世界の片隅で紡がれてゆく命の物語"
というサブタイトルに惹かれて、この作品に出会いました。
内容も美しく残酷な部分もあり、それでも作者さまのお話の構成がブレることなく紡がれていて、読みがいのある作品になっております。
序盤の大樹の中に取り込まれ、その声を聞くシーンは印象的。神秘的でありながら、その恐ろしさに惹き込まれます。セラがなにを選び、どんな行動を取るのか・・・。
ぜひとも読んでみてください。
文章はかなり洗練されており、読みやすいです。
ただのファンタジーに物足りなさを感じている方、オススメです!
骨太のファンタジー作品です。
精霊の存在は超常現象に近く、それでいて人々の生活にも密接しています。しかし普通の人には視認することができないという、一方通行の関係でした。
そんな世界において、なぜか主人公だけは精霊が見えます。
だからこそ彼は生まれ故郷の禁忌を破ってエルダーの木を焼くことになります。
この時点で、精霊は大いなる存在であっても常に正しいわけではない、というテーマが確立します。
さらにいえば、そんな精霊を利用して実りを享受してきた人間たちも必ずしも無実ではない、という表裏一体のテーマにもつながります。
主人公が冒険をするのは、この表裏一体のテーマに決着をつけるためです。
ネタバレになるので詳しく語れませんが、主人公の出生は物語のテーマに直結するものであり、人間と精霊の在り方をどうするのか天秤にかけるものです。
そんな壮大な背景を背負った主人公が、自分の秘密を知らないまま、生まれ故郷を飛び出して、外の世界に触れていきます。
世界中にある精霊と人間のつながりから、自分が何者なのかわかったとき、主人公は大いなる選択を求められます。
精霊と大自然と人間、これら共犯関係にある繋がりを維持するのか、それともたとえ大破壊が発生しても新しい秩序を求めるのか。
さらにいえば、もし共犯関係を維持することにしたら、自分自身が犠牲になることを受け入れないといけません。
主人公は血のつながらない家族である弟を通して、この究極の選択肢に悩むことになります。
はたして主人公は、どちらの世界を望むのか?
それを見届けるのは、このレビューを読んだあなたです。