第十五話【✨】
『さて、準備が出来ましたね。ヒカリさんの方はどうですか?』
『今入りました』
『あ、来ましたね。あ、ヒカリさんはガンサーなんですね』
『そういう九十九さんはランサーなんですね』
『いざという時にガードが出来ると安心するんですよね』
『ああ、分かります。大剣みたいな目立った火力は無いものの、安定感があるのがいいですよね』
〔配信も後半となり、狩猟の時間となった。今回は九十九がホストとなりそこにヒカリが合流する〕
【なお使用率…】
【人気はそこまでだったけどね】
【言うてヒカリは武器種半分くらい使えるけどね】
【配信者がコラボしてガード性能が最高峰の武器2種が両方揃うのってそうそうないよな】
『え、ヒカリさん他にも武器使えるんですか?』
『いや、確かに使えはしますけど、特定の相手にはこれって感じですから。それに対してこれはどの相手にも担いでいけるくらいには練度に差がありますよ。ギルカ見ます? 使用率の差がエグいですから』
『あ、それなら私のも送りますね』
〔送られてきたそれが画面に映し出される。九十九のチャンネルである為に出ているのはヒカリの物で、そこにはいくつか山はあるがその中でも群を抜いて突き抜けているものがある〕
『確かに突出率は凄いですね。でも他の武器種も100超えてるじゃないですか。私のなんて、他の武器種は全部一桁ですよ』
『これを見る限り、一応全武器種を試してみたけど、上手く扱えずに今の武器で落ち着いたって感じですね』
『あー、やっぱり分かります? やってみてガード武器が安心だなってなりまして、それでランスになったって感じです』
『コメントにもあった通り、この2つはガード性能トップクラスですから、その辺が良かった感じですかね。でもそれならガンスでも良かったんじゃ……?』
『見るところが多過ぎて対応しきれなくて……』
『あー。有名な人でもゲージ管理ミスとかしてる事もあったりするし、慣れてない人はちょっと厳しいかもしれませんね』
【ガンスで有名……あの人かな】
【とか言ってるけど、ヒカリが使う武器って…】
【なお、ヒカリは特殊ゲージのある武器ばかり使う模様】
【ヒカリはロマン武器大好きだから、特殊ゲージやらなんやらのついたのばっかだよね】
『いや、今じゃ特殊なゲージとか無いのの方が珍しいって。それよりも、そろそろクエに行きません?』
『そうですね。何か行きたいクエとかありますか?』
『あれ行きません? 変な名前シリーズ』
『ああ、アレですか。イベクエの奴ですね』
『それと、ボーナスアプデで追加されたやつですね』
『え? あ、あれも行くんですか……?』
『あ、苦手な感じですか?』
『終盤に激しい攻撃してくるんですよ? あんなの苦手だと思っても仕方ないでしょう?』
『それはそうですね。俺もあんまり得意じゃないけど、配信で弱いのに行くのもどうかと思いますし』
『あー、確かにそうですね。分かりました。まずはその3体に行きましょう』
〔このゲームでは西洋の怪物をモチーフにしたモンスターがおり、話に上がった3体のモンスターはそれぞれフランケンシュタインの怪物、狼男、吸血鬼がモチーフだと言われている。ヒカリと九十九はストーリーに登場した順に討伐していく事にした〕
『凄い今更だけど、ぶっちゃけこいつの動き全然わからないんだよね……』
『ええ!? 提案者ですよね?』
『いやだって、ストーリーには絡んだけど、使えるスキルとかあんまり無いし、個人的によく使うスキルも装飾品で付けれるし……』
『確かにそれはそうですけど……』
【実は俺も良くわかってない】
【あるあるネタだな。モンスター、装備スキルで判断しがち】
【でもイベクエになってるし少しくらいは行ったはずだろ? まあ、俺もその数回しかないけど…】
『というわけで、最初dps落ちます』
『いや、そんな事考えてプレイしてませんけど……。もしかしてガチ勢だったりします?』
『普通にエンジョイ勢。ただコラボなので言っておいた方がいいかぁぁぁぁっ!? タイミングミスったぁ!?』
『大丈夫ですか!? 今タゲを……あ、跳んだ』
『うわっ、あっぶなぁ……起き上がりタイミング合わせなきゃ死んでたかも』
【そういえばこいつ跳んだっけ】
【図体でかいくせに跳ぶの本当見た目を裏切ってくる】
【俺も初見の時こいつの動きに翻弄されたっけなぁ】
〔立ち上がりこそ不安定だったものの、持ち前のガード性能を活かして堅実に立ち回っていき、中盤以降は動きにも慣れて最初にミスをした攻撃にも対処出来るようになっていた〕
『いい感じ。弱ってるしこのまま……ん? 何この技……なんか地面が……ヤバそうだし逃げ……どわぁっ!? 爆発したぁぁぁ!?』
『きゃあああああああああ!! 死んじゃった』
【なにそれ!?】
【初めて見た!】
【こんな技持ってたか?】
【俺もこれで一度乙ったなぁ……】
【これもしかして、新しく追加されたモーションか?】
『大丈夫大丈夫まだ1乙だよ。気にしないで』
『すみません。すぐに戻ります』
『焦らないでいいよ。アイテム使ってたら補充していいから』
『あ、はい』
【なんか、頼りになるな。ヒカリのくせに】
【新モーションなんだし、乙っても仕方ないって】
【とはいえ、九十九の枠だから向こうの様子が見れないのちょっと勿体ないな】
〔既に弱っていたこともあって、九十九が復帰してすぐに討伐してクエストクリアとなった〕
『お疲れ様〜』
『迷惑かけてすみません』
『クエストクリアさえ出来れば勝ちだから、本当に気にしなくていいですって』
【確かにね】
【時間かかっても討伐出来ればOKよ】
【実際、クエスト自体はクリア判定なわけだしね】
〔拠点に帰還した後、装備やアイテムを整えて次のクエストへ〕
『あれ? 装備変わってませんね』
『まあ、ダメージソースの半分が砲撃なのでそこまで拘らないんですよね。属性特化してもたかが知れてますし、大体の人は各砲撃タイプで汎用編成して終わりじゃないかな』
『でもそれ、属性付いてますよね?』
『そうだけど、通らない場合は無属性武器と変わらないってだけなので気にしてないですね。ガチ勢じゃないからダメシミュ使って最高火力をって感じじゃないですし。それよりも装備の組みやすさの方を優先してます』
『必須スキルだけで4スロ2つに2スロ1つでしたっけ?』
『ですね。そこにガード系スキルとか火力スキルとか入れるので結構カツカツなんですよね。だからこの武器がすごい便利なんですよ。と、そうこう言っている間に始まりましたね』
『それじゃあ、頑張りましょうか』
〔そして始まる2つ目のクエスト。1つ目のクエストのモンスターと違い俊敏性が特徴的なモンスターで連続攻撃なども仕掛けてくる。しかしガード性能が特に高い武器2種。しっかりと防ぎ乙る事もなく18分程で無事にクリアした〕
『倒したー』
『お疲れ〜。しっかし、やっぱ全然動き覚えてないなぁ。結構時間掛かったなぁ』
『え? 結構早く倒せませんでした?』
『え? えっと、九十九さん、普段どのくらいの時間で終わりますか?』
『20分ちょっとですけど……』
『ま、まあ、マルチ体力ですしね』
『そ、そうですね』
【弱点殴れてないからなぁ】
【ド下手という程ではないけど、九十九はそんなに上手くないからね】
【ガード多めだから時間がかかってしまうのは仕方ないかな】
【ヒカリも肉質無視を活かして後ろに張り付いていたっぽいけど、弱点殴れてないから火力出しきれてないね】
【単純計算で、ソロ体力をNPC含めて3人で殴るのとマルチ体力を2人で倒すのじゃ前者の方が早くてもおかしくはない。NPCのダメージがどんなもんか知らないけどさ】
『コメントで色々言ってるけど、エンジョイ勢の俺達は面倒な事は考えずに素直に楽しみましょ』
『そうですね。でも、次は楽しめる気がしません……』
『あははは! まぁ、苦手意識がある相手だと行きたくないってなるのも分かりますけど、慣れて上手く対処できるようになると反転して楽しくなりますから。一緒に頑張りましょう』
〔このゲームには姿や雰囲気が変わって能力が変化するモンスターが一定数存在する。そしてこのモンスターも姿を変えていく。とはいえ、最初の姿ではそこまで苛烈な攻撃を仕掛けては来ないので2人はまだ余裕があった〕
『それにしても、良くそれ出来ますね。タイミング難しくないですか?』
『まあ、慣れですから。それに、成功すると蟲ゲージが回復しますから狙える時は狙っていきたいですからね』
『私には無理そうです』
『……実を言うと、ガード盛り盛りにしてるとほとんどの攻撃で退け反らないからダメージを受けないし、無敵技で最終段を躱して攻撃するのが基本だから回避ある分ワンテンポ遅れたりして攻撃できる量が減るんですよね。だからこれ単体だとやる意味ってゲージ回復くらいしか無いんですよね。後は単純にかっこいい?』
『確かに出来るとかっこいいですよね。配信者としては是非決めたい技ですね』
【そうなんか】
【言われてみればそうか】
【食事スキルで回復出来るけどな】
【まあ、あるスキルと組み合わせると必須レベルに便利なスキルになるんだけどな】
〔といった具合にゲームに関する雑談が出来るくらいには余裕があったが、モンスターの姿が変わりその余裕も無くなっていく〕
『来ましたよ』
『げっ!? タイミングミスった! って、タゲまだこっちかよ!? 待って待って! あ……』
〔ガード不可攻撃を無敵技で躱そうとするもタイミングが遅く被弾したところに、更に追撃がかかり、回復しようとしていた事もあって防げずにヒカリはやられてしまう〕
『すみません。やられました。すぐ戻ります』
『準備整えてからでいいですよ』
『いえ、アイテムまだ使ってないんですぐに戻れます』
『え……? あ、はい』
【結構強気でいってたんだな】
【ヒカリのはヒーラー猫なのかな?】
【そういや俺も最近はほとんど回復アイテム使わないな】
【まあ、最近はネコ飯やスキルで回復できてしまうからなぁ】
【九十九、既に何回か使ってるのに相方はまだ使っていなかった件】
〔九十九は回復アイテムを何度か使っているのに、ヒカリはまだ使っていないという事実に一瞬驚いたのか、九十九が操るキャラクターの動きが少し鈍り、その結果被弾してしまう。姿が変わり攻撃の苛烈さが増していた事もあり、更なる追撃を受けて九十九もやられてしまった〕
『あああああああああ! すみませーん!』
『ドンマイドンマイ! まだまだいけるよ!』
【これで2乙か】
【流石にそろそろ最終形態来ると思うが…】
【最終形態前に二乙は流石に厳しいか……?】
【まだ初見殺しのあれが残ってるし無理そうか?】
〔ここでモンスターの体力が一定ラインを下回ったことで最終形態に移行し、またモンスターの姿が変わる〕
『来た! 最終形態!』
『うう、これ本当に苦手なんですよね……』
『まずは……俺の方か!』
〔最終形態に移行すると使ってくる超連続攻撃をヒカリに向けて放たれる。九十九は流れ弾が当たらないようにガードを固めつつ攻撃が終わるのを待っているが、その画面内ではヒカリのキャラクターが時にガードし、時にいなしつつ、隙を見て無敵技で懐に潜り込んで攻撃し、最後の攻撃を高く跳び上がって躱している姿が映る〕
『えぇ……? それで避けれるの……?』
【ヒカリちゃん上手くね?】
【そんな回避の仕方が…】
【客観的に見るとマジでギュンギュン動いてるのな】
【そんな避け方は空を飛べる武器の特権…いや、今作だと飛べるのいっぱいあったな】
〔連続攻撃後の長い隙に畳み掛けるも弱らせるには至らず、再び動き出したモンスターの隙の少ない攻撃に翻弄されつつも少しずつダメージを与えていく〕
【最終形態だし後少しだと思うが……】
【まだ青出ない…】
【青出た!】
【弱った!】
【後ちょっと!】
【いけるいける】
〔モンスターが弱るとその証としてアイコンが画面に表示され、それを見てコメント欄が沸き立つ〕
『くっ! 攻撃激しすぎて、全然攻撃出来ません! これだからこいつは……』
『後ちょっとだから頑張って! ……あっ、11連撃来るよ!』
『え、あ、こっち!?』
【本当に来た!?】
【九十九が狙われてる!】
【逃げろ逃げろ!】
【いやここはガードだろ!】
【九十九後ろー!】
【うわ食らった!】
【逃げろ逃げろ!】
【落ち着け九十九!】
【ヤバいヤバい! とにかく防げ!】
【次ガー不くるぞ!】
【あっ…】
【ああっ!】
【うわあああああ】
【3乙だぁぁぁ】
『ごめんなさああああああい!!』
『いや、今のはしょうがないって。俺もたまにミスって攻撃喰らうし』
『……でもなんか手慣れてましたよね?』
『あー、俺複数の武器種使ってるから、それに合わせて防具ガチャも回さないといけなくて自然と交戦回数が増えるんですよね……。それで少し慣れてはいます。苦手意識はまだありますけど』
【九十九拗ねてる?】
【かわいい】
【複数の武器種が使えるとそういう問題もあるのか】
【1つの武器種でもガチャ沼るのに、それをいくつも……マゾかな?(仲間を見る目)】
【確かヒカリ半分くらい武器使えたし、それ揃えるために周回してればそりゃ慣れもするか】
『マゾじゃねーし! お前と一緒にするなMニキ! まあ、とにかくそういう理由で対処法は多少は知ってるって感じですね。それでどうします? 時間的にあと1クエくらいですけど、何やります?』
『私が選んでいいんですか?』
『これまでの3つは俺が選びましたから』
『それじゃあ……さっきのクエストのリベンジで!』
『いいんですか? 苦手なんですよね?』
『負けっぱなしなのは悔しいので』
『なるほど……分かりました。なら次は無乙で勝ちましょう!』
『そうですね!』
〔そうして始まったリベンジ戦は2度目という事もあり、2人とも落ち着いて対応していき無乙のまま終盤戦へ〕
『九十九さん来ましたよ!』
『こっちですか!』
【また九十九か!?】
【大丈夫か!?】
【イケるイケる!】
【ガード固めていけ!】
【ガー不気をつけて!】
〔ガードを固め、ガード不可攻撃は無敵判定の特殊技を使って躱しきる〕
『やった!』
『ナイスー! 一気に畳みかけますよ!』
〔超連続攻撃を凌ぎきった事で2人は勢い付き、2度目の超連続攻撃はヒカリが狙われるが1回目のクエストの時と同じように躱しきってそのまま倒し切る〕
『勝ったーーー!!』
『やりましたね』
『ヒカリさんのお陰です!』
『九十九さんが頑張った結果ですよ』
【ないすぅ】
【ナイスー】
【おおー倒したー】
【無乙クリアおめでとう!】
【888888888】
【まさか本当に無乙クリアするとはな】
『さて、そろそろ終わりの時間ですけど、最後にお互い感想を言い合って終わりにしましょうか』
『そうですね』
『では、まずはヒカリさんからどうぞ』
『俺、他のVの人とコラボって初めてだったけど、こっちのこと気にかけてくれていて、色々と助けられることもあって、だから、最初の相手が九十九さんで良かったです!』
『そう言っていただけるとこちらとしても誘った甲斐がありました。私もヒカリさんとコラボして楽しかったです。それに、ゲーム中はすごく頼り甲斐があってカッコよかったです。また今度コラボしましょうね』
『はい! その時は是非!』
『では終わりの挨拶ですけど、どうします?』
『んー、普通にお疲れ様でしたでいいんじゃないですかね。ぱっと良いのが思いつかないですし』
『そうですね。では…』
『『お疲れ様でしたー』』
【お疲れ様でした〜】
【お疲れ様でした〜】
【おつライト〜】
【おつライト〜】
【お◯みこ〜】
【次の宵闇の時間で】
【次の宵闇の時間で】
『おいこら全裸ニキぃぃぃぃぃ!!』
『うわっ!?』
ーーこの配信は終了しましたーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます