第三話【✨】

【だから、やっぱり声が一番だって!】

【その意見には同意するけど、気さくな感じも俺は推したいね】

【ゲームセンスも忘れるな】

【まあまあ、みんな好きだってことでいいんじゃないの】

【そろそろ戻ってくるんじゃない?】

【あの声で俺は罵られたいね】

【もうじきトイレから帰ってきそうだし流そうぜ】


『ただいま〜……って、なにこれ? これってもしかして、配信中に席を立つと告白大会が行われるという例のアレなのか!?』


【流せ流せ】

【あ】

【んほぉぉぉ】

【やべ!】

【戻ってきちゃった!】

【あ】

【な、なんでもないよ〜 (;・3・)~♪ ひゅ、ふす〜】

【バレた!?】

【いや、隠北斎先生の良いところを語り合っていたところだよ】

【口笛吹けてねーじゃねーかw】


『そこは俺の話じゃねーのかよ!? え、嘘だよね……?』


〔コメント欄をスクロールしていくと、見事にヒカリのイラストレーターママである隠北斎に関するコメントが書かれていた〕


『本当の事じゃねーか!』


【木】

【苔】

【藻】

【根】

【俺らにまともなVリスナー像を期待するな】

【ごめんね。でもヒカリの事もちゃんと好きだから】

【でも隠北斎先生が可愛いのは事実だろ?】


『フーリンさん……ありがとう。俺もフーリンさんの事好きだよ』


【あ、ニートネキずるいぞ!】

【俺もちゃんと好きだから! 唐揚げの次の次の次くらいに!】

【てぇてぇ……なのかな?】

【えんだ〜】

【ヒカリが好きなのは大前提として、他の好きな子って話だから】

【ニートネキはハロワ行け定期】

【俺もヒカリの事、だ い す……け!】

【それよりも腹減らね?】

【これは百合展開か!?】


『だいすけ? 誰よその男! 腹減ったんならご飯食べな! 百合だけど百合じゃないから。俺元男だから! はぁ……それよりも、続きやるよ続き。何してたっけ……ああ、そうだ。レベリングしてたんだった。そろそろ最後の薬草取ってもいいかな?』


【だめです】

【いっそのことカンストさせようぜ】

【いいんじゃない?】

【カンスト耐久配信したいって?】

【クソゲーという噂だし備えておいた方が良くない?】

【カンストまでとなるとかなり時間かかるし、風呂入ってくるわ】


『取りまーす』


【あ!】

【無視かw】

【え、風呂入ろうと思って甚平用意してたんだけど……?】

【あーあ。やっちまったなぁ】


『え、何かまずいの?』


〔アークが薬草を摘んだ瞬間、ゴゴゴという音と共に画面が揺れる〕


『え、何何何!?』


〔アーク達がいた場所の地盤が沈み落ちる。そしてアーク達の前に広がるのは古代に栄えたであろう古びた街並みと、その先に存在する昏いオーラだった〕


《それは偶然だった。薄氷の上のようなギリギリの所でバランスを保つような状態であった地面が、アークが薬草を摘んだことで絶妙なバランスが崩されてしまい、その下にあった空間への道を生み出してしまった。魔族が住まう……そして、魔王が封印されている地下世界へと続く空間への道を。あーあ、やっちゃったなぁ。他にも薬草はあったでしょうに……全部お前のせいだからな、アーク》


『そういうシナリオだろうが! えぇ!? なんで毒吐くのナレーション!?』


【薬草】

【お茶】

【木】

【枯葉】

【楽草】

【それでこそナレーションさんだぜ!】


〔チュートリアル画面が表示され、そこでこれからの大まかな目的が説明される〕


『なるほど……ここを対魔族、魔王の拠点として、その運営と発展を行うから経営なのか。それから……えぇっ!? なんで人間側からも襲われるの!? 遺跡の貴金属や宝石類なんかの価値あるものは発見者の物となるため、盗掘者や盗賊、欲深き貴族から拠点を狙われるのでその撃退もする必要がある!? 選択によっては拠点そのものを取られる事もあるのでご注意をって……クソゲーじゃん!?』


【難易度バグってて草。あ、草使っちゃった……】

【前門の魔族、肛門の人間って所か。周り敵しかいなくね?】

【だから言ったのに〜。(適当言ったらなんか大変な事態になっちゃった…)】

【一応三つの要素が出揃った感じか?】

【そういえばナレーションが言ってたメインヒロインって誰だろ?】

【すまん。誤字った】


『草別に縛ってないから好きに使いなー。適当だったんかい! 確かにメインヒロイン出てきてないね。多分メニュー画面で一番前にいた子だと思うけど、今のところ影も形もないよね』


【肛門の人間w】

【酷い予測変換だw】

【せめて黄門ならまだマシだったのにw】

【肛門の人間wやばいwツボったw】


『え、あ! 確かに凄い誤字してる!?』


【というか予測変換に出てくるとか何したらそうなるんだ?】

【そりゃお前、ナニだろ】

【おいおい、痔の可能性もあるだろ】

【お腹痛いwたすじぇてw】

【あ……ごめん。今度いい医者探しておくね】

【そういえばあれ使ってる? ドーナツ型のクッション】

【俺別に痔じゃねーから!】

【タイプミスするほど笑ってんのかいw】


『うわ、コメント欄がめっちゃカオスになってるんだけど……。無視してゲームしてよっと』


「「アー君!」」

「アーク君!」

「みんな無事!?」

「無事だけど……」

「この高さだと、救助を待つしかないようね」

「そんな……」

「私達、これからどうなってしまうの……?」

「とりあえず状況把握をした方がいいんじゃないか?」

「そうね。何があるか分からないし、全員で行動しましょう」


〔パーティに4人が加わるが戦闘に出ることが出来るのは4人までなので、誰を出すのかを選択する〕


『どんな性能か分かんないしとりあえず双子入れておこうかな』


〔編成を終えて周辺の探索をするも、敵と遭遇する事はなく、途中アメリアの指示が入り道に落ちている焚き木を拾いつつ進んでいく。そして暫定的なキャンプ地であると言わんばかりの焚き火とテントの置かれた場所に出た〕


「拓けてるしとりあえずここを拠点にしておきましょう」

「じゃあ俺、火付けますね」

「お願いね」

「それにしても、ここはなんなんでしょうか?」

「分からないわ」

「分からないよ」

「多分だけど……昔栄えた都市の跡地なんじゃないかな。理由は分からないけど、それがいつの間にか地中に沈んだとか?」

「ここの考察よりも、今は目先の事。ひとまずご飯にしましょう」


〔イベントCGが表示され、各々が持ち込んだ弁当を食べている様子が映し出される〕


「お昼を持ってきたから今はなんとかなってるけど、この後どうしましょう?」

「この近辺は安全みたいだし、まずは食べられるものを探しましょう。寝泊まりする場所も欲しいし各自必要なものを集めましょう」


『いや、普通にテントあったよね?』


【茎】

【ガン無視されてるね】

【多分だけど、マップを用意してないんだろうね】

【差分がない感じか…?】


『それくらい作れよ! テントないだけだろ!』


「分かりました。それにしても、アメリア先生のお弁当、かわいいです」

「それ、私も思ったわ」

「それ、私も思ったよ」

「それって先生の手作りなんですか?」

「そ、そうだけど……変かな?」

「そんな事ありません。すごく美味しそうです」

「先生をお嫁さんに出来る人は毎日そんなかわいい弁当が食べられるなんて、ちょっと羨ましいな」

「ちょっ、アーク君!? 先生を揶揄わないでください!」


《ちっ!》


『あははははは! ナレーションこんなところにも出てくるんだね』


【www】

【WWW】

【ナレーション舌打ちしてて木】

【ナレーションw】


〔食事を終えて、個別行動となりパーティ編成から一時的にメンバーが外れる。そして一緒に行動するメンバーを選ぼうというヒントが表示される〕


『んー、さっきはアメリアと一緒に行動したから今度は別の子と行動しようかな。誰がいいと思う?』


【アメリア】

【双子のでかい方】

【ポンコツちゃん】

【クーリア】

【ライト・セイバー】

【アメリア】

【アメリア】

【姉妹の小さい方】

【アーシャ】

【アメリア】

【ライト】


『別の子って言ったでしょうが。ライトが1番多そうだし、ライトにするね……って、あれ? 話しかけられないんだけど。どゆこと?』


【バグとか?】

【座標ズレバグ?】

【ボタンおかしくなった?】

【やはりアメリアにしろという神のお告げでは?】

【他の子はどうなの?】


『あ、そうだね。ちょっと試してみる』


〔その後、アーシャ、リーシャ、クーリアと声を通うとするも全く反応せず、残ったアメリアだけには何故か声をかけることが出来た〕


『なんでアメリアだけ?』


【何がどうなってんだ?】

【ボタンは壊れてないし、やっぱりバグ?】

【ナレーション相手にBSSしろという神の啓示だ】

【ちょっと調べてみたんだけど、どうやら最初の選択肢でアメリアを選んじゃうとアメリア以外反応しなくなるバグがあるらしい】


『なにそれ!?』


【なんて酷いバグだw】

【木】

【苔】

【水草】

【何そのバグ……】

【更に言うと、途中でアメリアが無い選択肢があるからそこで詰むって攻略サイトに書いてあった】


『く、クソゲーじゃねーか! 最初の選択肢で実質クリア不可とかあり得なくない!? 普通デバッグしてるよね!?』


【うわぁ……】

【流石にこれは……】

【これは酷いw】

【確かにゲーム史に名を残すレベルのクソゲーだw】

【多分、最初の選択肢でルートが固定されちゃったとかロックが掛かったとかそういう感じなんだろうけど……酷いなこれ】

【もしかしてこれが、ナレーションの愛が起こした奇跡……】

【よくこんなの売ろうと思ったなぁ】

【アプデもないの?】


『なんかもう、やる気なくなっちゃった。明日も学校あるし今日はこの辺で終わるね……』


【元気なくなってて艸】

【まあ、こういうこともあるよ……】

【次回は前の配信で言ってた通りでいいんだよね?】

【あー、結構時間経ってるね】


『うん。次回は予定通りやるよ。だからその時を楽しみにしててね。じゃあ、おつライト〜』


【あ、うん。おつかれ〜】

【おつライト〜】

【乙】

【お疲れ様〜】

【ノシ】

神乃ヒカリ【フーリンさんだけだよ、ちゃんとやってくれるの……】



ーーこの配信は終了しましたーー

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