第四話
突発配信を行った翌日、今日も今日とて学校だ。
学校に行くのは少し憂鬱ではあるものの、今日は絶対に外せない用事があるので行かないという選択肢はない。
というのも、
だから、そのイラストが出来ているのかどうか、進捗を確認する必要がある。
それならデータでやりとりすればいいと思うかもしれないが、こうして欲しいとかここはこういうのがいいという考えは実際に見て直接話し合いたい。
まあ、それがなくても学校に行くんですけどね。
学生として恥ずかしくない生活をするという条件の上で配信を許してもらってるので。
この学生として恥ずかしくない生活というのは、ちゃんと学校に行き、しっかりと勉強するという事。
赤点は即禁止とならないのは、得意不得意があったり、病気なんかもあって現実的ではないからだそうです。
俺、苦手ではあっても赤点なんて取った事無いんだけど……まあ、条件が緩くなる分には助かるので何も問題はないんだけど。
「おはよー」
「ぉ、おはよぅ……」
今、俺が挨拶したのは隠北斎ママこと、
声がかわいい、ゲームセンスある、そして……気さくな感じがいいとライトメイトに言われていた隠北斎先生は、実はこんな感じでした。
基本的に人見知りで内弁慶な性格で、エロい漫画とかエッチな絵とかが好きでどちらかというと男目線で女の子を見てしまう系のオタク女子、それが隠北斎先生なのだ。
2人きりなら地が出るのだけど、朝の学校という周りに人がいる状況なため、超奥手人見知りモードに入ってて会話が難しいが、それでも話をしない事には始まらない。
「えっと、サムネの件なんだけど
……もう出来てる?」
「お、お昼に、いつもの所で」
「分かった」
会話終了。
続きはお昼ご飯の時に。
◇
「遅いぞ」
「いや、紫音もさっき部屋に入ったばかりだろ。同じクラスだし」
「それもそうか」
「……なんで教室にいる時とこんなにキャラ違うんだろうな」
「うっせぇ! それよりもほら、サムネ描いたから確認してくれ」
「分かった」
紫音から画面を向けられたノートPCにはドレス風の衣装を着た神乃ヒカリのイラストが写っている。
俺がしたオーダーは収益化した際にその発表をする時の記念配信サムネで、服装はドレス風で神乃ヒカリの衣装のカラーリングをベースにアレンジしたのというもの。
モブ校生だった俺ではこういう色彩センスやファッションに関する知識が足りてないからフワッとしたものになってしまっているが、紫音は見事に答えてくれている。
「どうだ? どこか気になる所とかはあるか?」
「衣装はこれでいいけど、この腕のポーズをもう少し下に下げれる?」
「腕!?」
「うん。だってこれ、ちょっと寿司屋のあれに見えるし」
「え? うわ、言われてみれば確かにそう見えてきた……うん。分かった。直す」
「悪いな」
「いや、これも仕事だから」
そう言うや否や、紫音は今この場で修正を始めた。
「今すぐじゃなくてもいいんだけど」
「これ明日の配信で使うつもりなんだろ? なら出来るだけ時間をかけないとクオリティに響くだろ」
「紫音……」
「後、せっかく私のかわいい娘の大事な回なんだ。妥協なんてしてられるかよ」
「お前、俺を娘なんて言って恥ずかしくないのか……?」
「少なくとも今のお前は最高にかわいい娘だろ? 大体何だそのおっぱいは! 私を馬鹿にしてんのか!?」
「お、おっぱいは関係ないだろ! それに好きでこうなったんじゃねぇ!」
「うるせぇ! 母親から血筋だから諦めろと言われた思春期の娘の気持ちがお前に分かるか!」
「そんなん知るかー! というか、揉むんじゃねぇ!」
戸隠紫音という少女は小柄ですとーんぺったーんな体型を気にしていたみたいだ。
でも俺こそ言わせてくれ。
突然神様に性別変えられたやつの気持ちが分かるのかと。
まあ、言わないけど。
自分がスタイル抜群な美少女に変えられたけど、それが紫音の逆鱗に触れたのは理解したから。
「やべぇ……ヒカルの胸マジで興奮する!」
「離せ馬鹿!」
「ああ、もうちょっと……」
「もうちょっとじゃないわ! ったく……それで、修正はどのくらいで終わりそうなんだ?」
「ん? ああ、それなら今夜中には終わらせられると思うぞ」
「そうか。でも、お願いした側が言うのもアレだけど、あまり無茶はするなよ? 出来るだけクオリティの高いのがいいと言っても、紫音に無理させたいわけじゃないからな」
「ぁ……ああ、分かってるって。それと、報酬はいつも通りな」
「了解」
中学からの友人でクラスメイトだからといって、無償でというのは良くない。
なので、1枚につきお昼1週間分用意するという取り決めをしている。
お互い高校生なんでね、懐事情はそんなに良くないが、安すぎても良くないという事でこうなった。
お友達価格でもある。
それでも一食500円と換算してそれが5日で2500円だから高校生からしたら結構いいお値段なんですよ。
収益化で少しは楽になるといいんだけど、どうなる事やら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます