第八話
配信を終えたが、まだカンヴァは繋げているのでそのまま紫音と通話をする。
「急に悪かったな。でも助かったよ。お陰でかなり好評だった」
『感謝しろよな』
「してるしてる」
『してるなら明日は唐揚げにしてくれ』
「子供かよ。しかし、唐揚げか。明後日じゃダメか? 今家に鶏肉なくてさ」
『そういう事なら仕方ないか。明後日だからな。忘れんなよ』
「忘れないって」
ーーガサゴソ
『何してるの?』
「あー、どうせならこのまま話しながら宿題でもやろうかと」
『それなら私もやろうかな。数学苦手だし、頼りにしてるぞ、ヒカル』
「俺もそんな得意じゃないんだけど……」
とはいえ、分からないところは相談し合えるというのは助かるところ。
というわけで、お互いにPCの前でノートを広げて宿題を始める。
『そういえばさ、次の配信はどうするか決まってたりするのか?』
「んー、特に何も決めてないかなぁ。この問題はこの式を……」
『そんなんで10万人いけるのかよ……』
「さぁ? とはいえ、今はまだ起爆剤になりそうなネタとか特に無いのがねぇ」
『あー、ブームに乗っかるとか?』
「そうそう。流行りのゲームとかは配信やら投稿やらが増えて視聴者が色々顔出したりするからその時にガッツリ捕まえたいなとは思ってる」
『そう都合よくブームが来るとは限らないけどな。お前P◯系のハード持ってないし、それでブーム来たらどうするんだよ』
「そんなのどうしようもないだろ。ぶっちゃけ高いから手が出ないし」
『バイトして買わないのか?』
「そんな時間ないって。精々長期休みに短期でって感じだな。もっとも、それだって配信に使うゲームやらサムネイラストの依頼やらに使うから本体買う余裕はないんだけどな。中古ゲームでもよっぽどアレな作品じゃなきゃそれなりに負担なんですのよ」
『ちょっw 急になんだよその喋り方は』
「いやー、今日の配信の奴不意に思い出しちゃってさ。実際の所、俺ってこの喋り方でいいのかな? 一応今女だし」
『それってVtuberの話? それともリアル?』
「リアル」
『リアルね〜。キャラ作ってるように見えるけど、今更感はあるかな。多分周りはずっとそういう奴って認識になってるだろうし。実際何も言われてないんだろ?』
「あー、子供の頃に言われてたような記憶があるわ……。もっとも、ここ数年はほとんど言われてないと思う」
『なら今更変えるとかえって変に思われるだろ』
「それもそうか……」
『んー、そんなに変えたかったの?』
「いや、そうじゃないけど、変に目立ってないか気になってな」
『今のお前は頑張らなくても目立つけどな』
「それはそう。未だに鏡見る度にうわ! 可愛っ! って思うし。でも、だからこそ悪目立ちは避けたいんだよ。紫音なら分かるだろ? 可愛いんだから」
『なっ!? ばっ!? 急に何言ってんだお前は!?』
「何って、客観的事実だが?」
紫音はすとーんぺったーんなツルペタ体型でメガネお下げと地味な見た目をしてはいるが、顔立ちは整っているし声もいい
。
ちゃんと見ればみんな可愛いと思うだろう。
『本当、何、言ってんだよ、馬鹿……』
「いやいや、本当に、紫音は可愛いさ」
『にゃっ!?』
「ぷっ! にゃっ!? だって……なるほど。こういう風に言うと照れると。今度配信でやろうかな」
『馬鹿! ふざけんな! アホ! ボケナス! 恥ずい事言うな!』
「ごめんごめん。でも可愛いと思ってるのは本当だから」
『ぁぅ……もういい! 通話終了!』
「あ……切れちゃった。流石にからかい過ぎたかな?」
悪い事しちゃったなー。
明日会ったら謝らないとな。
あ、そういえば宿題……通話に夢中になっててやるの完全に忘れてたわ。
目の前にあるのは少しだけ書き込まれてはいるもののほとんど手付かずの状態のノート。
あー、明日のご飯のこともあるし、急がないとなぁとは思うもののそう簡単に終わらないのが宿題というもの。
結局終わったのがいつも寝る時間よりも30分遅い時間となった。
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