第十三話

普通に学校に行ったり、配信をしたりであっという間にコラボ前日だ。

ツイーターでの告知も既に投稿済みで明日また引用して誘導するものの今日出来ることはもうなくなってしまった。

他に何か出来ることってあったかな……?


ーーピリリリリッ!


「ん? 誰から……紫音? なんだろ? 紫音? どうした?」

「どうしたっていうか、あれってどうなってるんだろうって思ってな」

「あれ? なんだっけ?」

「焼肉だよ焼肉! 約束したじゃないか!」

「そんな事のために電話してきたのかよ!?」

「あ、いや、それも気になってはいるけど、1番は、ヒカルが緊張してるんじゃないかって、思って、だな……」

「え、心配してくれてたのか?」

「……悪いかよ?」

「いや、なんか意外で……」

「意外って何だよ!? こっちは、よく知らない相手とはいえ初めてのコラボで緊張してるんじゃないか? ちゃんとご飯食べれてるのかな? 寝不足になってたらどうしようって思っていたんだぞ!?」

「母親かよ……」

「ママだよ! 正真正銘、ガワを提供したママだよ!」

「そういえばそうだったな」

「そういえばじゃないんだよ! なんで私の方がソワソワしてるんだよ!? ちゃんと緊張しろよな!」

「なんだよ緊張しろって……。とはいえ、緊張ね……正直言って実感が湧かないってのが正直なところかな。コラボなんて初めてだからさ」

「それはそう……なのかな?」

「まあ、当日になって時間が近づいてきたらどうなるかは分からないけどな」

「そう。なら、当日また電話するよ」

「は? いやいや、いいって。そんなんしなくていいって」

「うるさいなぁ。配信内容に関しては何も出来ないんだからこれくらいさせろ」

「どうしてそうなるんだよ……。まあ、分かったよ。それじゃあ頼むとするよ」

「任せろ。じゃあ、そろそろ切るね」

「ああ」

「あ、最後に……明日、頑張れよ。応援してる」

「頑張る」


ーーピッ!


「ふふっ、頑張れか。というか、あいつの方が緊張してるんじゃないか?」


まあ、それでも応援してもらえるのは嬉しいしその期待に応えたいと思っちゃうんだけどな。

あ、紫音がこうならもしかしていつものメンバーもひょっとしたらツイーターに何かしら投稿してるかもしれない。

ちょっと見てみようかな。

どうせ今日出来る事はもう全部済ませちゃったし。


【明日は初コラボか。ヒカリ緊張してないかな?】

【ここのラーメンは当たりだったな】

【残業ツライ……タスケテ】

【ちょwww 神おま過ぎwww】

【爆死した……かなしい】

【ツイーターの方も名前全裸お兄さんにしたら変な人にフォローされまくる……早まったかな?】

【90万人突破おめでとう〜! いつも頑張ってるのを見てたからこっちまで嬉しくなったよ。100万まであと少し。これからも応援してるよ】


まあ、こんなもんだよな。

所詮俺はただの個人勢で数多いる配信者の一人でしかない。

だから毎日俺関連の呟きをしている人の方が珍しいだろうし、企業勢の人に対する呟きなんかもあるだろう。

そんな中1人だけ呟いている人もいるんだけどね。

フーリンさんだけだよ、俺の事を気にしてくれるのは。

ニートでする事がないからだけなのかもしれないけど……。

それはそれとして、この呟きはなんだろう?


【バル散】


なんでバル散?

害虫駆除の奴だよね?

なんでそれだけを呟いて……メモ帳代わりにでも使ってるのか? と思ったけど、これよく見たら大喜利アカウントに対する回答の奴だった。

ドラゴンと思われる迫力あるイラストにン以外隠されたタイトルに対して好きな文字を入れて大喜利をする奴。

害虫駆除に本気出しすぎでしょ。


お、告知の返信の所にはちゃんと楽しみって呟きがある。

いいねの数は多くないし返信されてる数も少ないけど、いつもいる人達の名前があるのを見るのは嬉しいな。

これを見ると頑張ろうって気になってくる。

……うん、頑張るよ。

みんなに楽しんでもらえるように。

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