第六話

配信を終えた俺はヘッドホンを外してすぐに電話をかける。

相手はもちろん、配信中にとんでも発言……いや、とんでもコメントを残した馬鹿、紫音だ。


ーートゥルルルルル、ピッ


「お前ー!! なんてコメント残してんだ!?」

『悪い悪い。でも別におっぱい揉んだくらい話してもいいだろ?』

「そっちはどうでもいいわ! そんな事よりも、もしもあれで身バレしたらどうするつもりなんだよ!?」

『あれくらい大丈夫だって。似てるっつったって二次元と三次元じゃ別物だから気にする必要ないよ。それに、ある程度情報を出しておかないと前みたいに写真が欲しいとか言い出すかもしれないだろ?』

「む、それは確かにそうかもしれないけど……」

『というかさ、前にOurtuberやってた時とか顔出してたんじゃないの?』

「出してない出してない。精々手を出すくらいだ。運良く再生数稼げても変なのが寄ってくるだけだし、稼げなくて知り合いに見られても笑われるだけだしな。それにその時のだってとっくに削除してるし」

『あー、まー、それもそうか』

「だから、身バレはしたくない。それに今は美少女になってるから尚のこと身バレしたくない」

『確かに、今の見た目だと危ないか。ごめん。軽率だった』

「分かればいいよ。とにかく、今後は気を付けてくれよな」

『分かった。あ、それと焼肉の件、忘れるなよ?』

「はいはい。つっても、食べ放題だからな。そっちこそ、それを忘れるなよ?」

『分かってるって。じゃあな』


ーーピッ


切られたけど、言いたいことは言えたしまあいいか。

しかし、しまったな。

紫音が不用意な発言してしまったから予定よりもだいぶ早く配信を終わってしまった。

時間にして約30分って所か。

今更再開しますってのもカッコ悪いし、今日はこれで終わりにするか。

時間余ったしちょどいいから次の企画でも考えておこう。


「といっても、何やればいいかな……参加型はこの前やったばかりだしなぁ」


歌枠……は絶対やりたくない。

今なら美声になってるから見れるものになるとは思うけどやっぱり恥ずかしさが先に来てちゃんと歌える気がしない。

というかそもそも歌枠ってどうやればいいんだ?

企業の人達は割と気軽にやってはいるものの、時折音源どこだっけ? なんて言ってたりするし、その辺がどうなってるのかよく分からない。

歌枠をやる予定はないけれど、切羽詰まって、ネタに困って歌枠に逃げる可能性は否定出来ない。

だから、そのもしもの時のために一応調べておいたほうがいいかもしれない。

そうと決まれば早速調べよう。


配信を終えてたまま付けっぱなしになっていたパソコンに向き直り、検索をしていく。

あー、やっぱり著作権とかは音楽に関する某有名協会が関わってくるのか。

あ、でもその辺は大体サイトの方でなんとかしてくれてるみたいだ。

とりあえず調べて分かったことは


・例のアレに登録されている曲はOurTubeでやる分には著作権的にはクリアしている

・オケ……CDのボーカル無しの奴には別の権利関係が発生しており、演奏した人達にも権利があって、使用に関して交渉をする必要がある

・配信で歌うためには自由に使っていいよってなってるオケが必要で、その辺はフリーの音源を拾ってくる必要がある

・アカペラや弾き語りという選択肢も一応はある。まあ、俺リコーダーしか吹けないけど

・替え歌なんかしてしまうと別の権利に引っかかる可能性がある

・あくまでも基本的には黙認してもらっている状態なので、権利保有者に何か言われたりしたらその通りにする必要がある


大体こんな感じか?

他にもあるかもしれないけど今はこれくらいでいいだろう。


「はー、やっぱり歌枠はあまりしたくないなぁ。そもそも俺あまり歌知らないし」


とはいえ、10万人目指す以上はいつかはやらないといけない事なんだろうなぁ。

Vtuberは全員がってわけじゃないだろうけど、歌枠は定番の配信内容なわけで、つまりはそれ目当てに見にくる人なんかもいるはず。

登録者を増やせそうな配信内容をやらないというのは10万人を目指す以上見逃す手はないんだけど……やっぱなぁ。

予定してないって言っちゃったし。

うーん、◯◯したら罰ゲームって枠を月1かそこらで……いや、少ないかな?

高校卒業までにという期限がある以上は出来るだけ数を増やしておきたい。


「ま、今はいいか。今はまだ下手くそだし」


遠い未来の事より目先の未来の方が大事。

とりあえず次の配信はこの前のとは別のゲームで参加型をやるとして、明日のお昼の買い出しでもしようかな。


「マジうまだから、か。明日のは少し気合い入れて作ろうかね」


明日のお弁当に使う食材を買いに行くために俺は着替えてスーパーに買いに行くのであった。

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