概要
旅路の果て、彼がたどり着いたのは、スペイン軍の猛攻に晒されるネーデルラントの小都市──ハールレム。
最弱の城、最強の敵、そして誰からも命じられていない戦いに、平次郎は身を投じる。
言葉も通じぬ異国の地で、なぜ彼は刃を抜いたのか。
そして、何を守り、何に屈しなかったのか。
時を超えて発見された一束の古文書が、歴史に埋もれた侍の魂を語り始める。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!くっそ、引き込まれる
新知識の驚きと喜びに満ちていて、かつ、それが史実であるという確かさと、なにごとであれそれは実際に起きてしまったことだという恐ろしさに支えられている、カクヨムでは非常に稀有な存在……いや書店で探してもどうでしょうか。
マイナーな主題の歴史小説って、地元の知られざる名士とか、困難な土木事業に取り組んだものとかは見つかりますが、薩摩藩士がオランダに行っちゃってるとかいうスケールのものは思いつかない。
人物の魅力、筋書きの面白さ、ほとんどの読者が知りもせぬ場所と時代についてのストーリーなのに苦も無くその世界に連れて行ってくれる筆力などがあって成立する作品だと思います。
まだ数エピソードしか読んでいま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ルネサンス期ヨーロッパの政治・経済・軍事に興味がある人、集合!
おすすめポイントその1は、古文書の解読から小説が幕を開けること。
誰がいつ何のために残した記録か探るうち、それが貴重な資料だと判明する――このワクワク感がたまらない。
おすすめポイントその2は、当時の日本人が大砲の買い付けのために欧州にやってきたというストーリー。
よって必然的に当時の日本と欧州の比較がなされる。
戦国武士の目に欧州の軍事はどのように映ったのか? 500年前の異文化交流が刺激的。
おすすめポイントその3は、世界史に出てくる大事件の裏側が良く分かること!
スペインの無敵艦隊や、その後の三十年戦争、「ドン・キホーテ」など、誰でも耳にしたことのある固有名詞や作品名。
その背景を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!遥か遠いオランダの地で、一人の侍が大軍相手に防衛戦の指揮を執る!
大砲の買い付けのために、中国人の通訳、楊とともに欧州へ渡った薩摩藩の侍・平次郎。
だが、戦乱続くヨーロッパでは、なかなか大砲を手に入れることができず、平次郎と楊は大砲を求めてさまよい、オランダのハールレムという町へ辿り着く。
だが、折しも当時世界最強と言われるスペイン軍もまた、ヨーロッパを席巻するべく進軍しており、ハールレムに迫っており……。
ハールレム攻防戦。初めて聞いた単語なのですが、その史実をもとに、当時のハールレムの町にに日本の侍がいた、という斬新な設定で物語が描かれています。
しかも、その侍・平次郎の書付を古文書の解読家が読み進めていく、という体裁なので、随所に説明が挿入され…続きを読む - ★★★ Excellent!!!オランダ――その独立の戦いの狭間に
八十年戦争という戦争があります。平たく言うと、オランダがスペインから独立するために戦った戦争です。
その戦争の中の白眉が、ハールレム攻防戦です。
……何だか偉そうに申しておりますが、実は私もよく知りませんでした。
ですが、この作品を読むにつれて、非常に厳しく、辛く、されど、知恵と勇気が輝く戦いであったことを知りました。
この国の人には馴染みのない戦いですが、そこを同時代の薩摩の人の目を通して、というか防衛戦の指揮を執ったという驚天動地の設定を用いて、この時のハールレムの人たちの勇気を、勇姿を、勇戦を活写しています。
「敵」側のスペイン軍の方にもその筆は惜しみなくそそがれ、読む者を飽きさせ…続きを読む