悲運の青年とおてんば王女、氷の剣士や黄金獅子の王と共に、古代ギリシャへ

真摯に願い、真剣に努力する者が、小人の悪意や敵意に足元を掬われる。互いに心から想い合っていて、誰も悪くないのに、誤解や思い込みですれ違い続ける。その先に訪れる結末は多分全然スカッとはしないものだろうと予測はつくのに、どうして人間は『悲劇』を摂取したがるのか。
私は、その答えの一端が、この物語の中にあるような気がします。例え悲しいものに終わっても、その願いや努力、想いは決して無意味ではなかったと、舞台から去っていく者たちに心から拍手を送りたくなるからです。二五〇〇年も昔のギリシャ悲劇がいまだに現存しているのも、そういうことなのではないのかなと思ったりします。
こちらの第一幕は幕が降りておりますが、既に第二幕の幕は上がっております。つまり、引き続き、古代ギリシャの風に彩られた主人公たちの旅路を追いかけることができるということです。古代地中海史がお好きな方、冗談みたいな出会いから始まる恋物語がお好きな方、神聖なまでに濃厚な主従の物語がお好きな方は、是非。

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