対立する二つの世界の間に生まれた兄と妹。その葛藤から目が離せない。

この物語は、根源的に対立する二つの世界の間に生まれた、兄と妹の物語です。
間の存在の兄妹、その葛藤と希望――もうこれだけでも個人的嗜好のドストライクゾーンでしたが、二人の絆を縦軸に、二つの世界それぞれの価値観や国の形、そこに生きている人々の想いを横軸に織りなされる物語は、王道の名に相応しい珠玉のファンタジーです。
何よりそれを盛り上げるのは、浮遊大陸や白と黒の二つの世界といった細密な世界観とそこに生きている人々のリアルな感情、そして、それを表現する流麗な文体です。単文の羅列で出来ている軽めの文章と比べると、修辞が駆使された文章は重厚ですが、だからこそ、架空の世界と人々の姿を鮮やかに描き出し、「物語を追う」楽しさだけではなく、「文章を読む」楽しさをも味わわせてくれます。
きょうだい、間の存在、真っ暗な絶望に包まれた時に敗北してしまうのも人間なら必死に希望を探そうとするのも人間である――そんな物語がお好きな方は、是非。

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