かつて、こんなにも優しい『野望』があっただろうか

『野望を抱く王子』。こう聞くと、さて、何を連想するでしょう。

私は、このキャッチコピーを拝見した時、『分不相応な望み』を叶えようとして『権謀術策』とか『力尽く』という手段で強引に物事を進めていくような、『野心家の王子様』を想像しました。
しかも、併記されている相棒らしき存在が『魔法使い殺し』なのですから。これはもう、本来なら王位を望めるような立場ではない『王子』が、『魔法使い殺し』なる腹心を裏工作とか暗殺とかに使って、宮廷内でのし上がっていくドロドロの権力闘争劇であろうか、と予想しました。

しかし、そこに『優しい物語』と続いたところで、頭の中に?マークが……。
『野望』、『殺し』という、どちらかと言えば殺伐としたイメージの単語の次に来るのが『優しい』とは? はて? と思いまして、そこから本文を拝読して、第一話の最後でものの見事に膝から崩れ落ちた次第です。

私の予想は大外れ、しかも、とても気持ちの良い外れ方でした。
ほのぼのとしているようで、どことなく不穏な影がちらついてもいる濃厚な世界観の中で紡がれる、愛と思いやりにあふれた『野望』を抱く王子と、責任感が強くて過保護で凄腕の『魔法使い殺し』による、『優しい』物語。
キャッチコピーに偽りはありません。ご興味を持たれた方は、是非。

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