宰相と近衛隊長は、少年王を間に挟んで並び立つ両翼であり、幼なじみであり、唯一無二の親友である――これだけでもわくわくしてくる設定ですが、彼らを中心に紡がれる物語は、ファンタジーであると同時に、ちょっぴり怪異譚であり、事件を追うミステリーでもあります。
ただ、主眼は謎解きそのものではなく、事件にまつわる人々の人間模様――誰かを想う姿であったり、何かを願う心であったりするように思います。それが、時には優しく、時には哀しく、香り高い文章で紡がれています。
特に、最初の『イリスのリボン』は、涙なしには読了できませんでした。最も怪異譚要素が強めですが、いわゆるホラーではありません。日本の『飴買い幽霊』のように、人という存在がもっと愛おしくなる、そんなお話です。
ファンタジーとミステリーの要素を散りばめた、信頼と友愛の物語。お好きな方は、是非。
「宰相ジェラルド」とその親友「近衛隊長チューザレ」が繰り広げる「ミステリー」だと思います。読み始めると「ファンタジー」かな?って思って、気がつくと「ホラー」かもって思って、なんだ「ミステリー」じゃん!って感じな物語構成です。
えっとですね。「公式のレビュー」でも言及がありますが、「謎の置き方」や「怪異」の時系列での変化等に「オリジナリティ」があふれていて、ちょっと他のミステリーでは味わうことのできない「例えようのない」読み味になります。
しかも「文章」がうまい。特に、文の終わりが「韻」を踏んでいるかのような「テンポ感」のある終わり方をするものだから、本当に「ストレスフリー」で読み進められる、非常に「流れた文」になっていて読みやすいのです。
ということで「カクヨム公式」も大絶賛のこの小説、手に取って読んでみませんか?
『イリスのリボン』
年若いファルファーラ国の国王に仕えるジェラルド、チェーザレ、アントーニ、ベネデッドの4人は若い日を共に過ごした親友だった。
月日が過ぎてジェラルドは国王を支える宰相に、チェーザレは近衛隊長となり、他の二人も国を支える役目を担うようになっていた。
ある時、ジェラルドの屋敷が何者かによる火事で焼け、その妻子が行方不明になる。ジェラルドは憔悴しながらもチェーザレを始めとする友人や部下に助けられ、事件の真相に迫っていく。愛しい妻と娘はいったいどこに——
物語は華やかな、そして石畳の音も聞こえる西欧風の王国で展開されます。物語の見どころは会話で紡がれていく登場人物の関係性です。ジェラルドと登場人物たちの関係が流麗な会話の流れで読み手の頭の中に浮かび上がります。
変わりたくないから、変わってしまった。変わりたくないから、側にいる。
主要登場人物は、皆、イケオジばかりです(ง •̀ω•́)งYes! マッチョ要素もふんだんに。イケオジな彼らだからこそ成り立つ物語であり、味わうことのできる物語の余韻かと思います。あ、もちろん若い子たちも頑張ってます!
まるで映画を見るようにその場面場面の映像が再現され、物語世界へ引き込まれていく感覚を是非、味わってみてください!
読書のお供に香りのよい紅茶と砂糖菓子を添えて。
若き国王より信を置かれる宰相ジェラルドは現在城を離れ、行方不明となった家族を探している。国王その人と、同僚であり親友である近衛隊長チューザレの気遣いをありがたく思いながらも己の目的へ向けて進み続ける彼。その周囲で起こる怪異や思わせぶりな事件には、果たしてどのような意味があるものか?
ジェラルドさんと国王と親友。縦と横の関係軸がしっかり結びつけられていて、作品世界がくっきりと浮き彫られているのが第一の魅力です。ここが明確化できていることで揺らせるのですよ、固く結ばれているはずの関係を。
そして謎の置き方も憎いのですよ。最初はただの怪異であったものが、じわっとジェラルドさんへ迫り来て、キャラ同士の関係性にまで侵食する。キャラの造形力はもちろんなのですが、この構成力は本当にすばらしいとしか言い様がありません!
蕾のように収められていた数々の謎がほころび、思わぬ花を咲かせるミステリーの妙、どうぞご堪能あれ。
(「縦から始まる主従の関係」4選/文=高橋 剛)