分かたれた双子の戦いの物語

図書の奥、重たそうで立派な装飾の本が並ぶ中にありそうな本だと、思った。美麗な言葉で紡がれる凱歌から始まる物語は読者を異世界へと深く、誘ってくれる。
夜と昼。まるで正反対の見目を持つ兄と妹はその性格さえも正反対だ。鋭利な刃のように気性の荒い兄、ハルと静かな湖畔のように穏やかで聡明な妹、セレナ。だけど、互いを深く、大事にしている。
だが、ある時、敵国が攻めてくる。目的は兄であるハルだったが、ハルを手に入れるための人質としてセレナが拐われることになってしまう。そんなセレナを取り戻す為の物語でもある。
この物語は登場人物の言葉運びから、背景にいたるまでどこか静けさを孕みながら凛とした美しさがある。
美しい言葉に誘われるようにして世界が語られる物語はまるで本の重みを感じながら読んでいるような心地になる。
重い本を夢中でめくり、主人公の行く先を見守った幼い頃を思い出す。
分かたれた双子の紡ぐそれぞれの戦いの物語を是非、ご一読ください。