あのとき百里ひゃくりじゅつを刺したのは、船に積まれた木箱のなかでじっと機会をうかがっていた胡珀こはくの片割れだった。

 船舶せんぱくが停泊するとりゅう子君しくんは一時的に拘束こうそくされたものの、胡珀の証言により無実がわかるとすぐに開放された。


 対して後日、百里家の屋敷から密造された煙幕えんまくと火器が大量に見つかったことで、彼らこそが一連の騒ぎの犯人だと露見する。

 百里一族は元宵げんしょうの酒宴にて、国主をおとしいれる計略をくわだてた罪で捕縛ほばくされた。

 かくして、故事に残る黙龍もくりゅう盲虎もうこは皇帝の暗殺を未然に食い止めたのである。




 ――と、いうことになっている。


 何も書物につづられた内容だけが真実であるとは限らぬ。

 彼らは互いを認め合ったわけではないし、助け合ったわけでもない。

 しかし結果として目的は果たされ、故事として後世に残されるのならそれもまた天命。


 時代を超えて語り継がれていく彼らの物語の一興いっきょうであろう。

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黙龍盲虎 白玖黎 @Baijiuli1212

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