ミモザの枝先

本作にはいくつもの絵画の名前が出てきます。その中でも特にこの作品を象徴するのがクリムト「接吻」だと私は思います。接吻とはいえブッチューといった感じではない心を重ね合わせる姿に主人公である澪と彗を思い起こさせます。
澪と彗ははじめて心を通わせた午前四時のミモザの木の下で抱えていた瑞々しさを成長しながらもずっと携えてきました。
そんな二人の周りにはミモザの花のように迷える人々が集います。
ときに楽しみぶつかったり悩んだりして皆未来へ向かっていくのです。

本作は小説作品ではありますが絵画を見ているような感覚で読んでいました。
絵画鑑賞において絵の具の匂いや、作者の魂のこもった筆致を感じるがごとく生きる匂いを本作からは感じました。

心のやわやわとした動きを感じられる素敵な作品です。

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