油彩画・夜明けのミモザ
一初ゆずこ
第1章 クリムトと午前四時の恋人
1-1 午前四時の逢瀬
置時計の秒針が、枕元で時を刻む。午前三時四十分。私は、ベッドから起き上がった。
忍び足で部屋を出て、薄手のコートに袖を通す。コートの下は、白いニットにジーンズ姿。パジャマはとっくに着替えていた。夜を青々と映す鏡の前で、鎖骨に届く長さの黒髪を
月が
グラウンドを囲うフェンスの角では、毎日の通学で見慣れた樹木が、枝葉を
今夜も、会えると思っていた。月光が落とす花の影を踏んで、木の下にたどり着いた私を、相手は朗らかに迎えてくれた。
「こんばんは。
「こんばんは。
「その荷物は、どうしたの?」
「魔法瓶。紅茶を
「ピクニックみたいでいいね」
ささやかな言の葉と、紅茶の湯気を
満開には、まだ遠い。少し粉っぽい甘さが、夜風に乗って青く香った。
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