宝物庫
「ここが宝物庫になる。客人の貴重品もあるから、あまり手を触れるな」
クインは鉄製の扉に何重にもかかったロックを素早く解除し、先導して中に入った。
その中は下駄箱ほどの大きさの金庫が数多く集まっているようだった。
人間一人が寝泊まりできるほどの部屋の広さであり、ロッカーが天高く備えられている。一番上の段は、セコンドはおろか、彼よりも背の高いクインですらも、背伸びをしても届かないだろう。部屋の隅の方に、脚立が設置してあるのが見えた。
「ここのロッカーは船長である私が持っているマスターキーか、各客人に渡してある専用の鍵がない限りは開かない。全部で2000のロッカーがあるが、一体どれを開ける気だ?」
「マスターキーの複製はないのか」
セコンドが訪ねると、クインは嘲笑する。
「そんなものあるわけがないだろう。それに、あったとしてもお前には絶対に渡さない」
彼は気を取り直し、ポケットの中からスマートフォンを取り出す。
手慣れた様子で画面を操作し、例のアプリを開いた。
アプリが起動すると共に、赤いセンサーのような線がセコンドを中心に回転する。
「撮影は禁止だぞ」
クインが忠告するも、セコンドは気にも留めない。
センサーは未だ回転を続けており、01を探索しているようであった。
支配の島から探索をしたときよりも、ずいぶんと長くかかっている。
クルクルと反応を探して回る赤い線を追ってしばらくした時のこと、ようやくアプリから反応が見えた。
しかしその赤い線が示した反応は、明確な場所を指していない。
線は無数に増加しており、この船のいたるところの方角を指していたのである。
セコンドは再検索を試みるも、今度は一瞬も経つことなく、無数の線が乱反射する画面が現れた。
「ここ以外になにか貴重品を保管しているところは?」
「あとは客室にある備え付けの金庫だ。それ以外に客人の物を取り扱っている場所はない。ミライ号の所持している宝石はここだけだ」
「ミライ号?」
セコンドはクインの言葉を繰り返す。クインは面倒くさいというように腕を組みながら答えた。
「この船の名前だ」
そうか、と言いながら、セコンドはスマートフォンにこの船の情報を記録する。
再びアプリを確認するも、依然として赤い線は無数に乱反射していた。
セコンドはため息をつき、宝物庫を後にする。
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