客船
船の後ろ側からバイクの警報を鳴らすと、船は中心から色が付いたように、その姿を現した。運行を停止し、甲板からハシゴを垂らしてくる。
彼は水上バイクを自動運転にして最寄りの島へ停泊するよう設定し、ハシゴを登る。
自動で走り去っていくバイクを後ろに、セコンドは素早くハシゴを登りきり、甲板へと足を降ろした。
船員であろう、制服と制帽を身につけた若い男2人が不安そうな表情を浮かべながらセコンドに話しかけてくる。
「あの、何かありましたでしょうか……」
それに対しセコンドは、制服の内ポケットから身分証を掲げて見せた。
「惑星管理局の者だ。訳あってこの船を調べなくてはならない」
「は、はあ……。惑星管理局の方がどうして客船に……?」
若い船員はまだ疑っているようであった。
しかし、セコンドがそれに構っている暇はない。この船が客船であるということを記憶しながら、彼は無機質に言った。
「この船の責任者は誰だ。どこにいる」
船員は戸惑いながらも答える。
「船長のクインでしたら操縦室にいるはずですが……。お呼びしましょうか」
「いや、船長の所に案内してくれ。そちらの方が都合がいい」
「はあ……承知致しました。ではこちらへどうぞ」
二人の船員は内部につながる扉を押し開け、セコンドを招きいれる。その間も船員は、不安そうに互いの顔を見あっていた。時々首をかしげながら、ため息をついている。
若い船員の背中を追いながら、セコンドは船内を見渡した。
大きな客船なだけはある。
しかも透明化を搭載できるほどの客船となると、安い船とは違って頑丈で、様々な加工もできるようになるだろう。
しかしながら、壁の一部や部屋の構造を見ると、客船の機種のなかでも旧式と呼ばれるものの面影があった。
透明化していたため、船の型番は不明である。この船が公式に認められたものなのかも怪しいものだった。
彼がそんなことを考えていると、操縦室の前の扉にまでたどり着いたようだ。
鉄製の重たそうな扉である。扉の上には、「操縦室」というプレートがはめ込んであった。
「では、我々はこれで」
若い船員2人は、そそくさと立ち去って行ってしまう。
セコンドは大きな扉を軽くノックした。
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