管理人

 1階にはあまり客はいなかった。比較的静かなその空間は、上の階層に押しつぶされそうなまでに天井が低い。


 そしてそこに居座る客たちは小綺麗な格好をしているものの、いわゆる一般的な人たちらしく、上の富裕層とは差分が生じているようだった。


 その1階の隅の方に、管理人室が設けられているのである。


 木製のドアに「管理人用」というプレートが埋め込まれている。それをセコンドは数回ノックをした。


 しかし扉の向こうからは声が聞こえない。その代わり、ノックの数と同じ回数だけ、電子音が聞こえて来た。


「惑星管理局の者だ。ミライ号の管理を担当している者に用がある」


 セコンドは簡潔に要件を言うと、今度は特殊なリズムで電子音が鳴った。


 電子音の長さは2通りあるようだ。短い音と長い音が組み合わさっているが、その組み合わせは、とても音楽とは言えない。


 だが、セコンドはその意思をくみ取ったのか、ドアノブへ手をかける。


「入るぞ」


 セコンドはそう言い、茶色い扉を開いた。


 (思った通りだ)


 セコンドの目の前にいたのは、黒いスーツを着た男だった。人の形をしているものの、その頭部がテレビになっている男である。


 頭部には目も鼻も口も髪もなく、ただ純粋なテレビが、首とコードでつながっていた。


 しかし彼の方からはこちらが認識出来ているらしく、セコンドに向かって会釈をして見せる。


「惑星管理局のセコンドだ。君はキングスか?」


 テレビの頭をした男は、数回電子音を発する。先程と同じ、2種類の音の組み合わせである。


 男のテレビの画面に、白い文字が表示された。”私がキングスですが”という文章だ。


「私は01という鉱石を探している。その在り処を知っているか」


 セコンドがそう言うと、また電子音が鳴る。


”01とやらがここにあると?”


「探索の結果、ここに反応があった。この船にあるはずだ」


”さあ、知りませんね”


 テレビの画面がそう語った。


”この船には色々と謎が多いのですよ”


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