2番手
セコンドの調査は行き詰まっていた。
キングスから船内を自由に探索することを意味する腕章を受け取り、そこから吹き抜けの階段を登っては、気になるところを見て行って、もう2時間程が経過している。
目まぐるしく移動する箱型の部屋から、ギラギラと様式が変わり続けるVIPルームまでと、部屋の数はおびただしい。
休むことなく動き回っていたセコンドであるが、まだその船の全容が掴めないでいた。
彼は売店で購入した栄養剤を右手に持ち、フロントの片隅のベンチに腰掛けている。
(まさかこれ程とは。思っていたよりも部屋の数が多すぎるし、内装の変化が著しい)
セコンドはそっと息を吐いた。必要なものしか入っていない栄養剤の苦い匂いが嫌な使命感をかき立たせてくる。記録を見返す彼の顔は、いつもよりも無機質な雰囲気を出していた。
ふと、その時。セコンドの内ポケットから機械的な音が鳴って振動した。彼は無理やり腰を上げ、その音源であるスマホを取り出して通話ボタンをタップした。
「こちらセコンド」
しかし、その言葉を言い終わらないうちに、電話の向こう側から甲高い声が喚き散らす。
「2番手! また僕に黙って任務に行ったな?!」
セコンドはその声を聞き、再びベンチに腰掛けた。黙ってその怒声に耳を傾ける。
「聞いているのか! 次の任務があったときは必ず僕も同行するって約束したばっかじゃないか! 何故破ったんだ!」
「この任務はお前には荷が重いと判断したまでだ。第一、私は約束なんてしていない。そして敬語を使え」
そう吐き捨てると、更に大きな怒声がスマホから発せられる。セコンドは無言で音量を最小に切り替えた。
「僕が実力不足な訳がないでしょ! だいたい、2番手だって人手が足りなくて困ってるって、前に言ってたじゃないか! 僕が行けば、100人力だって言うのに!」
「困っているとは言っていない。この任務は私だけで十分だと判断したまでだ」
「はぁぁぁ〜?!」
その怒声の大きさに、思わずセコンドはスマホから耳を放す。
高性能のマイクが搭載されているはずなのに、その声はガサガサと音割れしていた。
「何だよ! いつも僕のことを馬鹿にして! 絶対にそっちに行って活躍してやるから、待っててよね!」
「待て、ココノ……」
セコンドがその名を呼ぶ前に、ブツリと電話が途切れてしまった。
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