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旅館に戻ると、フロントの近くにある少し広いスペースの中で、アヤの両親がとても楽しそうに卓球を楽しんでいた。

「みんな、お帰り。」

アヤの父親であるシゲキは、アヤとサキが旅館に帰って来た事に気付くと、手を上げて言った。

「おかえり、散歩、どうだった?」

アヤの母親であるミサトも、アヤとサキを見ながら、笑顔で聞いた。

「うん、まあ、楽しかったよ。」

アヤとサキが、笑顔で言った。


「お父さん、お母さん、わたしたち、あっちに居るね。」

アヤはそう言うと、反対側にある小さなロビーを指さし言った。

「ああ、解った。」

シゲキは返事をすると、また、ミサトと卓球を始めた。

「家の親って、時々、とても能天気になるのよね。」

アヤが、少しため息を付きながら言った。

「良いじゃない、仲良しで。。。

それより、これからどうする?」

サキがアヤとタヌ助を見ながら言った。


「わたくしに、良い考えがあるんです。」

タヌ助が、少し胸を張って言った。

「えっ、どんな作戦?」

サキが、身を乗り出して聞いた。

「それは・・・。

あっ、その前に、みんなでお風呂に入りませんか?

ちょっと汗掻いたし、折角だから、温泉を堪能してから、作戦を立てましょう。

それからでも、十分間に合いますから。」

タヌ助が、キラリと光る眼を、アヤとサキに見せながら言った。

「うん、まあ、それもそうね。」

アヤも、少し嬉しそうに言った。

「そぉ?

じゃあ、風呂から出たら、直ぐに作戦会議で良いね。」

サキは残念そうな顔をしながら、念を押すように言った。


「アヤさん、サキさん、温泉の前で少し待って居て貰えますか。

わたくしも、少し準備してきますので。」

タヌ助はそう言うと、いそいそと歩いて行った。

アヤとサキは一度部屋へ戻り、入浴の準備をすると温泉へと向かった。

旅館の温泉は2Fにあり、2人がエレベータを降りると、そこにタヌ助が居た。

「やあ、来ましたね。」

嬉しそうに言ったタヌ助は、両手にリンゴを持っいた。

「どうせ温泉に浸かるなら、これも入れてみましょう。」

タヌ助が、笑顔で、リンゴをアヤとサキに渡した。

「ん、良い匂い。」

アヤはリンゴを鼻に当てると、匂いを嗅いだ。

「本当だ。

タヌ助にしては、珍しく気が利くね。」

サキも、リンゴの匂いを嗅ぎながら、嬉しそうに言った。

「でも、温泉にリンゴ入れるって、聞いたこと無いし、それに勝手に入れても良いのかなぁ?」

アヤが少し心配そうな顔で、タヌ助を見ながら聞いた。

「多分、大丈夫でしょう。

入れるといっても、ほんの少しの間だけですし。」

タヌ助が、少し冷や汗をかきながら言った。


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