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「ねぇ、タヌ助。

それって、タヌキ大神さまの孫娘、キクナさんが可愛かったから引き受けたの?」

アヤが少しムッとしたような顔で、タヌ助を見ながら聞いた。

「いいえ、そうではありません。

助ける相手は、タヌキ大神さまの孫娘、しかも、目に入れても痛く無いくらいに、可愛い娘なのです。」

タヌ助は、赤い顔で言った。

「と言う事は、上手く行けば、アヤさんとわたくしの、この呪縛を解いて貰えるかもしれない。

と言う事ですよ。」

タヌ助は、ズイッと顔をアヤに近づけると、とても怪しい顔で言った。


「フッ、フッ。

タヌ助、お主も悪よのぉ。」

アヤも、顔をタヌ助に近づけると、怪しい顔で言った。

「いえいえ、アヤさん程ではありません。」

「フッ、フッ、フッ。」

「ハアッ、ハアッ、ハアッ。」

アヤとタヌ助は、思わず声を出して笑ってしまった。


白狐ヶ山へは、アヤが住んで居る街から、車で2時間ほどの道のりだった。

あれから1週間後、アヤは両親に頼んで、この白狐ヶ山まで、1泊旅行に来たのだった。

「えー、アヤ旅行行くの、良いなぁ。

わたしは両親の仕事が忙しくって、行けそうに無いんだぁ。」

その話を聞いて、親友のサキが、とても羨ましそうに言った。

「ねぇ、タヌ助、わたしも一緒に連れて行ってくれないなかな?

きっと役に立つと思うんだ。」

サキがジッとタヌ助を見ながら聞いた。

「ええ、わたくしは良いですけど。。。」

タヌ助はそう言うと、アヤを見た。

「じゃあ、お父さんとお母さんに、サキも一緒に連れて行って欲しいって、お願いしてみるね。」

そうして、サキも一緒に旅行へ連れて行って貰える事になった。


白狐ヶ山の周辺にある宿泊施設の中で、露天風呂がある施設は1つだけだった。

ひなびた、とても雰囲気の良い旅館であり、アヤ、サキ、そしてアヤの両親は、その旅館を一目見て、とても気に入った。

旅館は、白狐ヶ山へと登る道の途中にあり、旅館の裏は、白狐ヶ山へと続いていた。


その日の宿泊客は、アヤたち以外には、老夫婦が1組居るだけだった。

その為、旅館の中も、その周辺も、とても静かだった。

「タヌ助、どうする?」

「旅館の周りを調べてみる?」

アヤとサキは、少し散歩へ行くと言って旅館を出ると、歩きながらタヌ助に聞いた。

「そうですね、そっちの山の方へ行ってみて下さい。」

タヌ助はアヤに抱っこされており、旅館の脇から山へと入る道を指しながら言った。

アヤとサキは、タヌ助が指した道へ入った。

それは人が一人通れる位の狭い道で、地元の人が、山へ入る時に使っている道だった。


「あまり奥まで入ると危険ですから、そこの木の辺りまでで良いです。」

タヌ助が、少し先にある大きな木を指しながら言った。

アヤとサキはその木まで行くと、立ち止まった。

タヌ助は、地面へと降りると、目を閉じ、ゆっくりと回った。

そして、立ち止まると、ゆっくりと目を開けた。

「どんな感じかな?」

アヤは少し前かがみになり聞いた。


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