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「それでは2人で、ゆっくり入って来て下さい。

わたくしは、ここで待っていますから。」

タヌ助が、笑顔で言った。

「ねぇ、タヌ助も一緒に入ろうよ。

折角の温泉で、露天風呂なんだし。」

アヤが少し赤い顔で、タヌ助を誘った。

「えっ、ですが。。。」

タヌ助はそう言って、サキを見た。

「おれなら良いぜ。

男同士、ゆっくりとお湯に浸かって、語り合おうぜ。」

サキはそう言うと、軽く、タヌ助の肩を叩いた。


「ええーーーっ、サキさん、男だったんですか?」

タヌ助が、とても驚いた顔でサキを見ながら言った。

「プッ、ハハハハ。

何言ってるの、もう、冗談に決まってるじゃない。

サキは女の子よ。」

アヤが吹き出し、笑いながら言った。

「ボケた つもり、だったん だけど。。。

タヌ助のマジ突っ込み、何か、傷ついたな。」

サキはそう言うと、指先で軽く、ツンツンとタヌ助を突いた。


「はぁ~~、良いお湯だね。」

リンゴが2個、プカプカと浮いている、湯の中に体を鎮めると、アヤは嬉しそうに言った。

「ホント、良い気持ち。」

サキも嬉しそうに言った。

旅館の露天風呂は、2Fの温泉の中から出られるようになっており、アヤとサキはそこから露天風呂へと出たのだった。

露天風呂は、周囲を少し低い柵で囲われていた。

しかも、その柵の向こうには、少し離れて、白狐ヶ山の山肌が見えるだけであり、何処からも覗かれる心配は無かった。


「あのー、アヤさん、サキさん。

これは、いったい何の罰ゲームでしょうか?

何故、わたくしだけ、目隠しされているんでしょう?」

タヌ助が、リンゴと一緒に、湯にプカプカと浮かびながら言った。

タヌ助はアヤのタオルで、しっかりと目隠しをされていたのだ。

「ゴメン、ゴメン。

お湯に浸かったから、タオル取ってあげるね。

でも、あんまり見たりしたら、ダメだよ。」

アヤが少し照れながら言った。

「ははは、そんな、見ませんって。」

タヌ助が笑顔で言った。


アヤが目隠しのタオルを外すと、タヌ助にはチラリとアヤの裸が見えた。

「あー、タヌ助、今、見たでしょ。」

アヤが少し恥ずかしそうに言った。

「いえ、見たのではなく、見えたのです。」

タヌ助が慌てて言った。

「タヌ助の、嘘つき。」

サキはそう言うと、タヌ助の体をギュっと掴み、思いっきり外へ投げ飛ばした。

「誤解だぁぁぁぁーーー。」

声を残し、タヌ助が遠くへ飛んで行った。


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