魍魎を狩る者たちの假面の告白

未だ霊妙の絶えない遥かな世、假面で貌を蔽った少年が、数奇な運命に操られ、宿命に手繰り寄せられ、険峻な途を征く。災禍を齎らす魍魎は未だ滅び去らず、異能の力を備えた術士も亦、任重くして、立ち止まること許されず。

物語の舞台は遥か昔のオリエントを偲ばせつつ、現代人の身近にある並行世界の如し。登場人物の揺れ動く心は、遠い彼の地とは無縁の親近感を抱かせるもので、感情移入も軽やかに読者を魅了、魅惑する――その點は、本作の特筆すべき処、語り部の見事な手綱捌きと申せましょう。

白眉は、主たる無明と白笶の織り成す奇縁と絆。假面の下に隠された白皙が思いも寄らぬ真実を明かし、新たな物語を朗々と唱い上げる。

艶やかな演舞、物静かに流るる笛の音。背を飾る風景も鮮やかに、細やかに、恰も一幅の屏風絵のように、読み手の眼前に広がり、綴じることなし。

諸氏に於かれては、是非とも、此の重層的な神代の絵巻を御堪能あれ。

その他のおすすめレビュー

蝶番祭(てふつがひ・まつり)さんの他のおすすめレビュー501