第1章 邂逅
01 屍砂漠
そこには、黒茶で塗りたくられたような大地が頭上を覆い、天界の光を阻む。
しかし、光が、光源がない、というわけではない。
そして
光が一切なく、闇に閉ざされた場所すらあるこの魔界において、光があるということ、これは珍しいことだ。
そして、この闇に閉ざされた世界で生きることが、悪魔に課せられた罰だと人は言う。
見当違いも甚だしく、愚かなことだと思うが、人は他者を虐げて初めて安心や自尊心を保てるのだ。
哀れに思えど、それを真面目に取り合うなど、自分が同じ愚者になった気分になること間違い無いと感じるが、悪魔の中にはそれを苛立たしく思っているものもいるようだ。
けれど、その目には悲しみや、先に述べたような理由からくる怒りといったものではないことが窺える。
では何か、と問われると困ってしまうが、注視をあまりしたくないが、よく見ると、それは
一体その瞳には何が写っているのだろうか。
少しして、頭上を見るのに飽きたのか (おそらく違うと思うが)、
「は〜」
彼女の吐息は紫色に染まり、すぐに霞むように消えていく。
それは、天界から降り注ぐ光の届かないこの
具体的に吐息が青く変色する理由を説明しようとすれば、長くなるので割愛する。
しかし、相も変わらず不思議法則の魔界だ。
そして
ブブブブブブブブ
煩い羽音を立てながら彼女に向かってくる魔蜂の群れも、魔界ならではだと言わざるおえない。
距離としては人間であれば辛うじて視認できるほど離れている。
しかし、長き時を生きる悪魔である彼女ならば魔蜂の群れを認識するなど容易いだろう。
魔蜂は人界に生息する蜂が魔界に偶然紛れ込んだことで変質した生き物だ。
5対の脚に、3対の翅、全長は人を軽く超える大きさだ。
ソレが群れをなしている。
人によっては吐き気を催すかもしれない。
そんな醜悪な姿形だ。
この屍砂漠において、相手がどのような姿をしていても油断はできないのだ。
餌一つ狩るだけでも全力を注がなければ、逆に狩り取られるの自分たちかもしれない。
魔蜂は長い間、
今、目の前にいる
判別することはとても難しい。
力を隠すのは
騙し、騙され、それでも足掻き続けて生きるしかない場所なのだから。
群れはついに彼女を取り囲む。
後は、
果たして、魔蜂の遺伝子にまで刷り込まれた生存本能を裏切る形で、ソレは示された。
そのように、魔蜂の群れのリーダーは見えていたことだろう。
それが、完全な勘違い以外の何物でもないことを知らずに息絶えたことは、幸運か、はたまた不運か。
なぜ、そのようなことになったのか?
それは、魔蜂が狙ったのは魔界において頂点に立つ魔王の一柱たる彼女であるからだ。
種族が
先ほどの魔蜂を例として考えよう。
魔蜂はいつ自分が死んだかすら理解できなかっただろうし、認識すらできなかっただろう。
これは
しかし、これだけでも彼女が魔王と恐れられることは理解できるだろう。
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***吐息が青く変色する理由***
(読まなくても良いやつ)
……屍砂漠で、吐息が紫色に変色するのは青になった吐息に岩の赤い光が当たるためです。こちらでは、吐息が青くなる理由について説明したいと思います
この世界ではどのようなものも魔法を使うための物質、魔原子を含む(原子とは別物だが、あらゆる物質は魔原子がなければ直ぐに空気中に存在する魔原子に魔化する。つまり、魔原子のない物質は自然界において存在できない)。そのため、吐いた吐息に含まれる水分にも魔原子が存在する。しかし、魔界に存在する魔原子は歪みであり、その水分にある魔原子を汚染してしまう。そのため、汚染された魔原子は青くなるから。
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