10 看護
少年の容体が急変することはなかった。
ただ、少年の皮膚に現れた黒の斑点は最終的に全身に広がり、数刻したのち、消え去るようになくなっていった。
そして、少年の体を魔原子で出来た繭が包み、彼を悪魔の一体に姿を変えていく。
なんの悪魔になるかはわからない。
悪魔の種族は多数ある。
もしかすると、これまでいなかった新しい種族となる可能性もゼロではないのだ。
ナゴスは念のために少年の容体を確認している。
リーナは晩御飯を作りに調理場に行った。
暇なのはメナリアだけであるのだ。
猫を拾ったのは良いものの、その猫を自分の手で看護できないような寂しさを感じているのだろう。
哀愁(?)に満ちた顔で窓から庭を眺めている。
庭に植わっている巨木の枝が窓の近くにまできている。
その枝には、白い花々が咲いている。
八分咲きと言ったところだが、それでも十分、見て楽しめる。
いつまでも見ていられそうな光景である。
しかし、メナリアは飽きたのか、視線を繭に向ける。
赤みのかかった白色の繭は小さく膨れ、縮み、脈動している。
繭の中にある光は規則正しく明滅し、生を感じさせてくれる。
「どれくらい、かかる?」
繭を見ながらメナリアはナゴスに聞く。
「チュウゥゥ(聞いた話が本当なら13日程度です)
チュウ(けど、この少年は例外だと思うので正確にはわかりません)」
「例外?」
「チュゥ(これまで、一度も肉体崩壊をしていない生物が悪魔に変異したことはないはずなので)」
そういうものかと言った感じでメナリアは納得したような表情を浮かべる。
しかし、彼だけを気にしていられるわけではない。
9日後には魔界会議が控えているのだ。
メナリアは行きたくはないが、今回ばかりは行かなくてはいけない。
今回の浄化をする本人が直接出向かなければいけないため、リーナを代理人として行かせることはできないのだ。
少し憂鬱な気分になったような表情を見せるメナリア。
再び、繭を視界に捉え、メナリアは、魔界会議が終わるまでに少年は変異を完了するのだろうかと思う。
ナゴスの言った日にちを信じるならば、魔界会議をやっている間に終わるだろう。
魔界会議が始まるまで9日、魔界会議自体が最低6日かかるためだ。
どうするべきか、答えは決まっているが、最後まで駄々を捏ねたい気分のようだ。
「は〜」
メナリアはため息を吐き、思考放棄をする。
つまり、現実逃避を始めたのだ。
メナリアは現実逃避をしている間、『今日の晩御飯はなんだろう。リーナ、苦手な食材入れないでくれるかな?』などと考えていた。
それでいいのか魔王……。
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